EYE KNOW

福岡在住B-BOYの音楽・映画・スポーツに関心を寄せて過ごす日々の観察記録

2017 グラミー賞に思う。(受賞者予想含む)

もうすぐグラミー賞

 今年もグラミー賞が迫ってきた。2月12日に授賞式があり、それぞれの部門のノミネートはすでに発表されている。このノミネートの対象期間は、授賞式の2年前の10月から1年前の9月までの一年間で、今年で言えば2015年10月〜2016年9月までが対象期間となる。えらく奇妙な期間設定だなと思われるかもしれないが、これはノミネートの選考期間を考慮して設定されたものらしい。主要4部門と言われる賞のノミネートは次の通り。

 

Album of the Year(最優秀アルバム賞)←アルバム演奏者および製作チームに授与。

 

Adele – 25
Beyonce – Lemonade
Justin Bieber – Purpose
Drake – Views
Sturgill Simpson – A Sailor’s Guide To Earth

 

Record of the Year(最優秀レコード賞)←シングル曲演奏者および製作チームに授与。

 

Adele – Hello
Beyonce – Formation
Lukas Graham – 7 Years
Rihanna ft Drake – Work
Twenty One Pilots – Stressed Out

 

Song of the Year(最優秀楽曲賞)←シングル曲の作詞者、作曲者に授与。

 

Adele – Hello
Beyonce – Formation
Justin Bieber – Love Yourself
Lukas Graham – 7 Years
Mike Posner – I Took A Pill In Ibiza

 

Best New Artist(最優秀新人賞)←この1年で著しい活躍をみせた新人に授与。

 

Kelsea Ballerini
The Chainsmokers
Chance The Rapper
Maren Morris
Anderson .Paak

 

皆さんはノミネートされたアーティスト/楽曲をどれくらいチェックできているだろうか。個人的にはAdeleやTwenty One Pilotsなどは「今年のノミネートなの?去年じゃなかったっけ?」と思うくらい前に聴いた印象であるが、それもそのはずリリースがどちらも2015年10月と前述の対象期間ギリギリなのだ。最優秀新人賞に関してB-boyであれば、昨年フレッシュマンとして話題をかっさらったのはぶっちぎりでAnderson .Paakだと感じるだろうが、Chance The RapperがノミネートされているとなればChanceに取らせてあげたい気持ちも強く悩ましい。しかしながら実際は杞憂に過ぎず、案外Kelsea BalleriniかMaren Morrisあたりのカントリーポップスの新星があっさりとっていくのがグラミーだったりする。

Chance The Rapperに関しては2016年のベストを書いたエントリでも触れているので是非チェックを↓↓

 

nino-brown.hatenablog.com

昨年ぶっちぎりのAnderson .Paak↓

MALIBU [国内仕様盤 / 帯・解説付き](ERECDJ218)

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最注目はやはりAdele。

 ここからは筆者の独断と偏見に基づく予想になるのだが、今回のグラミーの最注目候補はAdeleということになるだろう。最優秀アルバム賞では本命と言えるし、主要4部門中3部門で受賞する可能性も十分にある。ここで、先ほどのノミネートリストを筆者の予想を加えたものを再び載せたい。

 

(◎:本命、◯:対抗、▲:大穴とする。)

 

Album of the Year(最優秀アルバム賞)←アルバム演奏者および製作チームに授与。

 

◎Adele – 25
Beyonce – Lemonade
Justin Bieber – Purpose
Drake – Views
◯Sturgill Simpson – A Sailor’s Guide To Earth

 

Record of the Year(最優秀レコード賞)←シングル曲演奏者および製作チームに授与。

 

◎Adele – Hello
Beyonce – Formation
◯Lukas Graham – 7 Years
Rihanna ft Drake – Work
Twenty One Pilots – Stressed Out

 

Song of the Year(最優秀楽曲賞)←シングル曲の作詞者、作曲者に授与。

 

◯Adele – Hello
Beyonce – Formation
Justin Bieber – Love Yourself
◎Lukas Graham – 7 Years
Mike Posner – I Took A Pill In Ibiza

 

Best New Artist(最優秀新人賞)←この1年で著しい活躍をみせた新人に授与。

 

◯Kelsea Ballerini
◎The Chainsmokers
▲Chance The Rapper
◯Maren Morris
Anderson .Paak

 

このようになる。お気付きの方もいるかもしれないが、筆者の予想では本命、対抗としてあげているのは全て白人アーティストである。これはグラミーが白人を優遇しているという判断からではないが、グラミーを獲る”傾向と対策”を考えるとどうしたって白人アーティストの方が可能性が高いように思えるのだ。

 

グラミー獲得の”傾向と対策”

 筆者もB-boyとして、HIPHOPアーティストがグラミーを獲得してほしいと願っているが過去の受賞者を考えるとかなりハードルは高い。振り返ると、99年にはLauryn Hillの"The Miseducation of Lauryn Hill"が04年にはOutKastの"Speakerboxxx/The Love Below"がそれぞれ最優秀アルバム賞を受賞しているが、前者はR&BやSoulの趣きが強くピュアヒップホップの作品ではないし、後者は奇跡に近い受賞だがOutKastがそれまでキャリアを経てHIPHOPアルバムをPOPに昇華させた内容とも言える。近年では、14年のMacklemore & Ryan Lewisの新人賞獲得が記憶に新しいが、この年はKendrick Lamarをおさえての受賞だったのでなんとも複雑だ。むしろこの年の新人賞と去年傑作"To Pimp a Butterfly"で最優秀アルバム賞をKendrickが逃したことが筆者にとってグラミーを遠いものに感じる最大の要因かもしれない。

 

ここで筆者の考えるグラミー獲得に有利な要素について言及したい。

  1. カントリーやフォークなど伝統のある音楽ジャンルであること
  2. 万人に響くポジティブなメッセージがあること

1に関して、NARASの会員投票によって選考されるグラミー賞において、会員の平均年齢が高いことから当然予想される結果ではある。つまり極端に言えば年配の会員(当然黒人は少ないだろう)にとって馴染みのある音楽ジャンルが有利といえる。ヒットチャートがブラックミュージックによって席巻されていても関係ないのだ。

2に関して、これは完全に私見であるが、例えば「同性愛もいいよね」「差別に負けないぞ」「自分らしく自由に生きたい」など万人それぞれが共有できる普遍のメッセージというか、誤解を恐れず言えば「当たり障りのないメッセージ」が非常に好まれる印象がある。”ポリティカリーコレクト”を重要視するアメリカではこう言ったメッセージは手放しで評価できるためウケがいいのかもしれない。本年ノミネートのBeyoncé"Formation"やKendrick Lamarの一連の作品群のように素晴らしい詩的表現で強いメッセージ性があっても、物議を醸すような強烈な表現のある作品は敬遠されるのだろう。

以上の二つの要素を踏まえると、いよいよブラックミュージックのグラミー受賞は難しい気がしてくる。

 

(※追記 作品の素晴らしさから今回受賞すべきとの声が多いBeyoncéの"Formation"についての解説は渡辺志帆氏のブログエントリがとてもわかりやすいので是非チェックを↓)

 

shihowatanabe.hateblo.jp

 

 

受賞した二枚↓↓

The Miseducation of Lauryn Hill

The Miseducation of Lauryn Hill

 

 

Speakerboxxx: Love Below

Speakerboxxx: Love Below

 

 

 受賞を逃したKendrick↓

To Pimp a Butterfly

To Pimp a Butterfly

 

 

最後に。(それでも希望的観測を)

 いよいよグラミーはB-boyと縁がないもののように思えてきたところで、希望的な観測も示したい。的確な表現かわからないがグラミーの”バランス力”に期待すると、本年のノミネートからブラックミュージックアーティストが選ばれる可能性はあるのだ。

先ごろ、アメリカ大統領に就任したトランプ氏の宣う”アメリカ・ファースト”の実情に漂うアメリカ白人至上主義のようなニュアンスを感じている人は少なくない。政治的にそのように排外主義のような雰囲気が高まっている中で、文化面でも近々授賞式のあるアメリカ映画賞の権威アカデミー賞と世界一有名な現代音楽の権威グラミー賞の受賞者が全て白人であればいよいよ世界の終末のような印象を受けるだろう。だからと言って「黒人を受賞させるべき」というのではなく「黒人アーティストの持つ音楽性の高さを素直に評価しやすいタイミング」と言えるのではないのか。アカデミーも今年の演技部門の黒人候補者は過去最多の6名ということなのでそう言った”バランス力”が働いているのかもしれない。そう考えると、今年のグラミーも大穴としてBeyonceやChance The Rapperが受賞する可能性もあるような気がしてこないものだろうか。いずれにせよA◯EXとかいう特定ベンダーに飼い慣らされているような日本の賞と違って、グラミーは式の中でいろいろなアーティストのレベルの高いパフォーマンスを堪能できるので要チェックである。

 

(保険※ブラックミュージック自体は当然レベルミュージックとして高いポテンシャルを持っていて、グラミーを獲れる獲れないでどうにかなるものではないし、むしろ逆境に良作を生みやすジャンルだと思うので今後も良作が生まれること請け合いである。)

 

 

↓本文作成中に聴いた一枚

 

Kehlani / Sweetsexysavage (RnB/Soul)

 

www.youtube.com

 

数年前フリーミクステ"Cloud19"でぶっ飛ばされたKehlaniだが、当時の衝撃的魅力そのままに既にアーティストとして円熟をむかえているのでないかと思える内容だ。とにかくフックの中毒性の強烈さは健在で前回は"As I am"を死ぬほど聴いたが、今回も長いこと楽しめそうな一枚である。

Sweetsexysavage

Sweetsexysavage