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EYE KNOW

福岡在住B-BOYの音楽・映画・スポーツに関心を寄せて過ごす日々の観察記録

【HIPHOP入門編】知っておいてほしい即興ラップの知識と種類

HIPHOP MCバトル RAP ヒップホップ ラップ 日本語ラップ 音楽

はじめに。

 先日当ブログにて"日本のMCバトルの限界"についてのエントリを上げたが、ここ数年で初めてダンス/楽曲/フリースタイルなど様々な形でHIPHOPに触れた人にとっては意味不明な文章だったかもしれない。そこで、今後何本か【HIPHOP入門編】という括りでHIPHOP周辺に関する知識がゼロの人でも解るようHIPHOPを紹介しようと思う。

 

↓先日のエントリ、本文の読後でも興味があれば是非。

 

nino-brown.hatenablog.com

 

本文はシリーズ第1回ということで、盛り上がりを見せている即興ラップについて書こうと思う。

 

 

(※注意)以下本文では、度々"ラップする側の視点"からの説明が登場する。読者自身がラップすることに興味がなくても、フリースタイルを理解する上で"ラップをする側の視点"は非常に重要であると筆者は考えているの少し付き合ってもらいたい。

 

即興ラップとは。

 ではまず、即興ラップとは何か。読んで字の如く即興でラップすることなのだが、これをHIPHOPでは"フリースタイル"と呼ぶ。即興のラップであるからには、その場で言葉を考えると同時に組み立て、韻も踏まなければならないのだから大変だ。この行為の難しさが解らない方は是非一度自身でチャレンジしてみると良い、おそらく言葉につまり途切れ途切れになったり、全く韻を踏めなかったり、同じ言葉を何度も言ってしまったりするだろう。センスに差はあるだろうが、誰であれはじめからフリースタイルを格好良く決められる人間はいない。

 

少しでもチャレンジしてみると、今度はたちまちその難しさにぶつかり「自分にはできない」「できる人は天才なんじゃないか」なんて思ってしまうだろう。実際にラッパーを名乗る者の中でもフリースタイル巧者と呼ばれる存在は天才的なフリースタイルの才能を持っているのだが、誰もがある程度のレベルに達することはできると筆者は考えている。フリースタイルにはカラクリがあるのだ

 

 

 

フリースタイルの三大要素

 

(※以下筆者の意見に拠る)

 

 フリースタイルが格好良く決めるには幾つか要素があり、それらはそれぞれが完全独立した要素ではなく、ところどころ被っているところはあるのだが敢えて3つに絞って紹介する。

 

  1. 韻をしっかり踏んでいること
  2. 音楽性を持っていること
  3. 当意即妙なラップになっていること

(※1と2の要素について言えば、即興であるフリースタイルだけでなく楽曲上のラップの格好よさに直接つながる)

 

 

この3つの要素を兼ね備えているフリースタイルは格好良いということであるが、ではこの3つの要素のどこにカラクリがあるのかと言えばズバリ要素1、つまり「韻をしっかり踏む」というところである。フリースタイルにおいてとにかく韻を踏むということは、ラップをしない者にとって「即興でこんなことできるなんてすごい」と思わせる最たる要素かもしれない。しかし、フリースタイルの中で登場する"韻"の多くはその場で生まれたモノではなく用意されたモノである。

 

こんなことを書くと、「それでは即興ではないじゃないか」と思われるかもしれないが、その指摘は半分当たっていて半分当たっていない。例えば、ある日あるラッパーが一人でフリースタイルをしていたとして、偶然にもその場の状況をうまく切り取ったオリジナリティのある素晴らしい韻が瞬時に出せたとする。すると、もし次の日そのラッパーが仲間たちとフリースタイルをするとき同じ状況を迎えると、前日偶然にも出せた素晴らしい韻をリサイクルできるのだ。素晴らしい韻をそのとき初めて聞いた仲間たちは賞賛するに違いない。このようにラッパーはその場その場で生まれた韻を次に似た状況を迎えたときリサイクルできるように頭の中にストックする。この頭の中の韻のストックを俗に"引き出し"と呼ぶが、これこそフリースタイルを格好良く見せるカラクリだ。

カラクリと言ってもテクニックの一つで、卑怯な手段でもなければ魔法でもない。誰でも膨大な量の引き出しさえ準備することができれば、いかなる状況でもその引き出しから用意された韻をリサイクルすることでフリースタイルを格好良く見せることができるということなのだが、それだけの引き出しを準備するためには数え切れないほどのフリースタイルを行い自分の中でモノにしていく圧倒的な鍛錬が必要なのは言うまでもない。フリースタイル中の韻に関してまとめると、圧倒的な鍛錬で準備された引き出しと本当にその場で生み出された韻が存在しているということなのだ。

 

(※ちなみに本当にその場で生み出すものだけで表現するいわゆる完全即興のことをヒップホップでは”トップ・オブ・ザ・ヘッド”と呼ぶ。)

 

ここまでは要素1の韻を踏むことについて説明したが、要素2・3についても触れておこう。要素2について、ラップの持つ音楽性のことをHIPHOPでは"フロー"と呼ぶ。フローは良くメロディ性のことを指すと限定的解釈で誤解されるが、あくまで音楽性のことでメロディや声色、更にはリズムなども含んだラップの要素と理解しておいて欲しい。フローは最もラッパーの才能が出る要素と言っても過言ではない。オリジナリティあるフローを持つラッパーはそれだけで評価されることもあるし、いかに韻を堅実に踏もうともフローが格好良くなければ評価しないリスナーも多くいる。良く「ラップなんて音楽じゃない」なんて言っている人が一昔前までいたが、このフローこそラップを音楽たらしめる要素でありラップそのものを成長・変化させる要素でもある。

 

最後に、要素3の当意即妙なラップというのはつまり"即興性"と"巧さ"が両立しているかということだ。この要素こそ、フリースタイルならではのモノだが要素1と要素2と被っているところがある。引き出しから出した韻であってもその場で瞬時に思いついた韻であっても、聞く者が"その場で出た素晴らしい韻"と判断すれば当意即妙なラップと言えるし、ラップを乗せるビート/トラックに合うフローのアプローチがその場でできればそれも当意即妙なラップとも言える。では何故上記の2要素とは別要素して紹介しているのかと言えば、それはフリースタイルは複数人で行うことが多いからだ。つまり、一人ではなく複数人でフリースタイルをすると当然"会話劇"のようなものが生まれる。ラップでコミュニケーションがとれているかというところにこそ韻でもフローでもない"即興性"と"巧さ"が前面に出るのだ。他にも"ヒップホップインテリジェンス"や"ヒップホップIQ"が高いラップをすることも十分に"即興性"や"巧さ"につながるのだが、これに関しては都合上後で説明する。

 

 

フリースタイルの種類

 ここまではフリースタイルの要素についてつらつらと説明してきたが、ここからはフリースタイルの種類について説明する。はじめに説明した即興ラップであるフリースタイルという大きな括りの中に知っておいてほしい形式が2種類ある。それがサイファーとバトルだ。(それぞれ詳しい定義はいろいろあるだろうが筆者の感覚をもとに説明させてもらう。)

 

端的に言うと"フリースタイルをするラッパーや奏者と聴衆から成る群がり"のこと。街角であるラッパーが黙々とフリースタイルをしている、そこに他のラッパーが通りかかりフリースタイルでセッションが始まる、するとそれを聞きに聴衆が集まってくる、これがすなわちサイファーである。このように自然発生的なニュアンスを元来持つ言葉だが、こと日本においては街角にそういった環境がないためサイファーを主催したい者がSNSなどで参加者を募り〇〇サイファー(〇〇には開催地の地名が入る)という形で行われるケースが多い。勿論、仲間内でしか参加できないことはなく誰でも参加ができる開かれたものなのでサイファーと呼ぶには十分だ。サイファーにおいて注意してほしいのは、あくまでフリースタイルセッションであって罵り合いの場ではない、ということである。素晴らしいラップには賞賛をおくり、ラップセッションを純粋に楽しむものがサイファーだ。

 

  • バトル(MCバトル)

例えば、上記のサイファーの中で、明らかにあるラッパーに敵意剥き出しのラッパーがおりラップで罵り合いが始まったとする。当然、聴衆の歓声の差で優劣が決まる。こうなるとこれはバトルと呼ぶことができる。つまりバトルとは"フリースタイルで罵り合ったり、ラップスキルの差を競い合うラッパー達と勝者がどちらかを決める者がいる場"を指す。バトルにおいて注意してほしいのは、どちらがフリースタイル巧者かを決めるものであって、罵り合いでなくても成立するということと、聴衆の歓声の大きさで勝者を決めたり特定のジャッジ(審査員)が勝者を決めたりどちらの要素も持つ審査基準で勝者を決めたりと勝者の決め方が必ずしも一つではないということだ。バトルは、街角で発生するものや、賞金などを競うコンテスト形式のものなど様々なモノがある。

 

と、ここまでバトルについての説明はこんなものか。最後に、バトルで競うフリースタイルのラップスキルというのは既に説明したフリースタイルの三大要素ということになるのだが、バトル自体を説明した上でさらに加えたいことがある。

 

 

フリースタイルの"即興性"と"巧さ"。

 フリースタイルの"即興性"と"巧さ"については先に説明したが、サイファーやバトルなど複数人が前提のフリースタイル、特にバトルになると、その"即興性"と"巧さ"を表現する方法はさらに複雑になる。

例えば、あるMCバトルにおいて対戦相手のラッパーが極端に太っていたとして、このラッパーに対して"デブ"や"肥満"などの言葉を交えて韻を踏んだとする。一見すると、その場ではじめてバトルするラッパーに対して相手の特徴をとらえた当意即妙なラップと言えるのではないかと思うが、そうではない。ラッパーには"引き出し"があるので、審査するものはその程度の引き出しは当然準備しているだろうという判断をするのだ。ところが、もしその太っている対戦相手がメッシュキャップにメガネをかけていて更に髭を蓄えていたとして、ころラッパーに対して"マイケル・ムーア"という言葉を交えて韻を踏むと、即興性はグッと上がったと判断されるだろう。つまり、本当に"即興性"と"巧さ"が高いと判断されるには、引き出しで対応できるレベルではないかという厳しい目を潜り抜けなければならないのである。

MCバトルを見慣れていない方は「このラッパー巧く韻が踏めてるのに、なんで盛り上がらないんだろう」と思う場面があるだろう、それは聴衆が「引き出し」で十分に対応できるレベルと判断されているからかもしれない。この「引き出し」問題は更に複雑なのが、誰にでも言える簡単な韻では「引き出し」にあって当然と判断されるのだが、誰も言えないであろう音数の多い韻を出すと、今度はその対戦に向けて事前に考えられた台本、つまり「ネタ」と判断されかねないことだ。「ネタ」と判断されると、先述の例で言うところの"マイケル・ムーア"を使った韻でも聴衆は沸かないことになる。「引き出し」で十分対応できるレベルと「ネタ」臭いと疑われるレベルの間で戦うことをラッパーは強いられているのだ。勿論、聴衆がいかにバトルに精通しているかで「引き出し」と「ネタ」の判断基準は変わってくるため、そういった場の雰囲気を察知してフリースタイルに臨むタイプのラッパーもいるだろう。

 

最後に、筆者がどうしても紹介しておきたいのが"ヒップホップインテリジェンス"や"ヒップホップIQ"の概念だ。要はいかにHIPHOP学に長けているかということなのだが、この概念もフリースタイルバトルにおける"即興性"や"巧さ"と無関係ではない。バトルでは基本的にDJのかけるインスト(カラオケ)のビート/トラックの上でラップすることになるのだが、バトルで使われるビート/トラックはHIPHOPの名曲が使われることが少なからずある。そんなとき、バトルのラップの中でその名曲のアーティストについて触れたり名曲のフレーズを引用することができれば、十分に"即興性"と"巧さ"を証明することができるし、それらは"HIPHOP好きのみ共有できる"ものと言える。聴衆がHIPHOPに馴染みがない場合チンプンカンプンで場の反応は期待できないが、聴取がコアになればなるほど爆発的に盛り上がるのだ。昨今テレビ番組"フリースタイルダンジョン"などでバトルの認知度が上がり、聴衆にもライト層が増えた。HIPHOPに触れる人達が増えるのはいいことだが、こういった開けて場でのバトルから"ヒップホップインテリジェンス"や"ヒップホップIQ"の高いラップ表現が失われていくのは悲しいと筆者は考え、読者には知ってほしい概念ということで紹介した。

 

百聞は一見にしかず。

 以上、とりとめもない長文になってしまったが、百聞は一見に如かず、ということでフリースタイルに関する動画を2本紹介しておく。サイファーに関してはアップローダーがオフィシャルかどうかわからないものが多いので、気になる方は各自でチェックしていただきたい。

 

www.youtube.com

まず1本目はフリースタイルセッション。アパレルブランド"COCOLObland"の15周年特別記念企画のものだ。バンドサウンドとラップが重なりとにかく心地いい音楽を提供する"韻シスト"に、ゲストとして安定した韻の踏み方をする声の特徴的なラッパー"チプルソ"とHIPHOPの枠を超えた支持を持つ圧倒的フロー巧者の"鎮座DOPENESS"が参加した回。即興で作られるその場のノリととにかく楽しい和気あいあいとした雰囲気を堪能でき、音楽性も抜群に高い。

www.youtube.com

2本目は日本一バトルの強いMCを決めるMCバトル"KING OF KINGS"今年の東日本予選のものだ。"フリースタイルダンジョン"でもお馴染みの若手ラッパー"T-Pablow"とコアなファンに圧倒的支持を持つ"ISSUGI"のカード。ヒップホップに馴染みのない人からすれば圧倒的に音数の多いハイレベルな韻を出せているのはT-Pablowだが、揺るがないラッパーとしてのスタンスと小節に滑り込むような独特のリズムを持つISSUGIのフローの安定感も引けを取らない。"引き出し"と"ネタ"という視点や"即興性"、"巧さ"という視点からも見どころのある好カードと言える。

 

以上の2本の動画以外にも素晴らしいものはたくさんあるので各自チェックしてほしい。また、動画では決して伝わらない空気、緊張感や盛り上がりを現場では体験できると断言できるので、是非興味を持った方には現場にも足を運んでいただきたい。

 

 

 

 

本文作成中に聴いた一枚。

 

The LOX / Filthy America... It's Beautiful(RAP)

 

Filthy America It's Beautiful

Filthy America It's Beautiful

 

 

AppleのハイセンスなCMソング

HIPHOP RAP ヒップホップ 音楽

みんな大好きApple製品。

 

 皆さんはアップル社の製品はお持ちだろうか。iPhoneを筆頭にiPodMac book、テックギークな方はApple watchもバリバリ使いこなしているだろう。「自分には縁がない」とお思いのwindowsandroid派の方も、ひょっとするとiTunesは利用したことがあるかもしれない。本文を目にする方の多くはApple製品に少なからず触れて生活しているのではないか。ここ日本でも長い時間をかけながらも、Apple製品は確実に浸透してきたと言えよう。

 

もとより筆者はアナログな人間であるので、Apple製品の品質がどうのという話を本文でするつもりはない。むしろそういった情報にとんと疎くてもApple製品を愛用しているユーザーは多い。クリエーター向けを謳うApple製品が持つ最大の魅力とも言える"デザイン性"や"クールさ"。ギークな方々から「スカした情弱」は嘲笑の的であるかもしれないが、あえてそんなApple製品のイケてる雰囲気を象徴するテレビCM音楽に触れたい。製品自体がどうであれ"イケてる"を売りにするならば、CMでもイケてなければならないのだから。

 

 

耳がピクつくCM音楽。

 

 筆者は広告について無学なのでAppleのテレビCM自体の素晴らしさは判断しかねるが、CM音楽にはなかなかの思い入れがある。筆者の考えではAppleのCM音楽は、日本のテレビで流れる他のCM音楽とは違う。テレビ画面を見ていなくても音だけ聞いていれば耳がピクつくのだ。MTVなどを流していれば話は違うのかもしれないが、民放のテレビをつけていてAppleのCM音楽が流れると「何のCMが流れているんだ?」とついつい気になってしまう、そしてテレビ画面に注目し「おーAppleか。」と納得してしまうのだ。

 

そんなAppleのCM音楽がスゴイところは、単にニッチなところを突いてマイナーな音楽を起用しているわけでなく、ある時は気鋭のサウンド、またある時はクラシック中のクラシックを起用するところである。「この製品のイメージに合う曲はコレだ」という単純な発想でなく、DJ/セレクターのような現代的感覚が効いているため見聞きするものを惹きつけるのである。(勿論、音楽プレイヤーであるiPodのCMの功績は大きいだろうが。)

 

 

 

以下筆者の印象が強いものをペタペタ。

 

2004年 iPod 4G + iTunesのCM曲

Channel Surfing - Single

Channel Surfing - Single

  • ふぃーちゃー きゃすと
  • エレクトロニック
  • ¥150

 

 

2006年 iPod shuffle 2G CM曲

www.youtube.com

Prototypes

Prototypes

  • Prototypes
  • ロック
  • ¥1600

 

Prototypes (Dig)

Prototypes (Dig)

 

 

2007年 iPod 5G + itunes CM曲

www.youtube.com

 

 

Costello Music

Costello Music

  • ザ・フラテリス
  • ロック
  • ¥1300

 

コステロ・ミュージック

コステロ・ミュージック

 

 

 他にも2014年のiPadのCMに起用されていたマッシュアップブレンダーとして名高いAmerigo GazawayのMarvin GayeMos Defのブレンド曲が筆者としては秀逸だったのだが、こちらはやはり権利関係がグレーだったのか今となってはどこでも聞くことができないのは少し残念だ。これらの印象的な気鋭のサウンドにビートルズDeep Purpleのクラシック、更にはメインストリームでも時代を彩ったEMINEMのLose YourselfやFranz FerdinandColdplayも起用しているので本当に隙がない。

他にも皆さんにはそれぞれに印象的なAppleのCM音楽があるかもしれない。ジャンルレスかつ年代も幅広く見てセレクトされているためあらゆる層の視聴者の耳をピクつかさせ、これこそが、AppleのCM音楽がイケている所以であるかもしれない。

 

 

結局何が言いたいか。

 とどのつまり、AppleのCM音楽がイケてるという主張がしたいだけの文章になってしまったが、最後に本年のiPhone6のCM音楽に起用されたこちらを聴いてほしい。

 

www.youtube.com

 

テレビを視聴する人なら誰もが耳にしただろう。印象的なポエトリーリーディング調のRAPが素晴らしい。Little SimzはUKのフィメールMCでRAPだけでなく歌えるマルチな才能を持つアーティストなのだが彼女のCM起用曲Wingsが収録されているデビューアルバム"A Curious Tale of Trials + Persons"の出来がものすごく良い。かなり遠回りしたが、本文は彼女の才能を筆者として猛プッシュするのが最終目的である。

彼女が新しいアルバムを出したのだが、日本でフィジカルリリースされる気配がない。クレジットを見るだけでもジャマイカのホープChronixxをフィーチャーしているなど胸がワクワクするし、彼女のSoundcloudページで試聴する限りかなりいい匂いを感じている。

これからもAppleのCM音楽には反応せざるを得ないだろうし、楽しみなのは間違いないが、Little Simzの才能にもう少し光が当たって筆者含む日本のリスナーの耳に届くことを願うのみである。

 

↓要チェック

A Curious Tale of Trials & Per

A Curious Tale of Trials & Per

 

 

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SUPREME ボックスロゴの価値

ファッション SUPREME ストリート HIPHOP ヒップホップ

SUPREMEボックスロゴはもはや殿堂入り。

今日ふとストリートニュースをチェックしているとこんな記事を見つけた。記事の内容を要約すると、SUPREMEからボックスロゴフーディが発売され、発売日の当日だけでオンラインの販売ページのページビューがほぼ10億、ページアクセス数は倍の20億というのである。世界中のSUPREMEフリークがマウスやスマートフォンを同じ日に何度も何度もポチポチしたのかを想像すると滑稽でもあるが、ページビュー10億というのは恐ろしい数字である。

 

そもそもSUPREMEは日本でも10年以上前から支持されているストリートブランドであるが、ボックスロゴ関連のアイテムの人気は異常だ。専門家でないので確実なことは言えないが、この人気の秘訣は単にブランドロゴのみのシンプルなデザインというだけではないだろう。SUPREMEはボックスロゴ関連商品のロット数(簡単に言えばデザインしたものを工場へ発注する数)を安易に増やさず、加えて筆者の記憶する限り毎シーズン発売するわけでもない。Tシャツやステッカー、そうして今回のフーディなどボックスロゴ関連商品は、ある日突然「今度ボックスロゴフーディが発売されるらしい」というニュースが出ると瞬く間に消費者競争を招くのである。需要と供給のバランスが取れていないのだ。

 

欲しい者がたくさんいるのに、出回る数が少ないという”限定することによるブランディング”は所持する者にステータスを与え、それゆえ数多くのコピー品を生んだり転売目的のバイヤーの標的にされてきた。

 

 

 

以下筆者の思い出。

筆者(アラサー)がSUPREMEと出会ったのは中学生の頃で、当時はいわゆる"裏原宿"が全盛期だった。A Bathing Ape/Stussy/Supreme/Hectic/Swagger/Xlargeなど、あげればきりがないがドメスティックであれ海外であれとにかくストリートブランドが幅を利かせていて、筆者もどっぷりのめり込みお年玉や小遣いを財布に入れ、カツアゲされないようドキドキしながら買い物したのを覚えている。BoonやSmart、Street Jackなどの雑誌を読みふけっており、SUPREMEに関して言えば、雑誌の後半登場するの怪しい通販記事を見た知人が当時爆発的人気を誇った"World famous supreme team Tee"の紛い物を購入し、自慢気に着ていた記憶も思い出される。

 

 

(余談①、この頃の服屋で何か購入した際にもらったBoxfreshというブランドのノベルティのMix CDにGangstarrなどが収録されており、これが筆者のHIPHOPに目覚める一因となった。)

(余談②、SUPREMEというブランド名の読み方について「シュプリーム」と呼んでいたのだがスケーターである友人達は「サプリーム」や「サプ」と呼んでおり、どちらが正解かは当時から現在に至るまで謎のままである。)

 

それから高校に上がった頃から世間ではストリート熱が冷めていったが、ここ数年でスポーツブランドをミックスするファッションスタイルやメンズブランドを取り入れるスタイルを女性モデルが流行させることで、街中でもSUPREMEやStussyのアイテムを身につけている人を多く見かけるようになった気がする。

 

↓SUPREME店内の香りが好きな方はナグチャンパという香を焚いてみると良い。

 

SATYA サイババナグチャンパ 40g

SATYA サイババナグチャンパ 40g

 

 

SUPREMEというブランド。

SUPREMEというブランドについて、アパレル業界人でもバリバリのスケーターでもない筆者が語るのは難しい。そもそもストリートブランドはスケーターカルチャーや音楽カルチャーと付き合いながら変化していくし、ブランドであるから当然デザイナーの出入りもあり往年のSUPREMEファンでも「今のSUPREMEのデザインはダメだ」と突然離れることもある。それでも「今度バスキアのフォトプリントTeeが出るらしい」などと自身の関心から反応せざるえないトピックを定期的に与え続けることで人気を維持し続けているように思う。HIPHOPで言えば、ニューヨーク気鋭の集団PRO ERAクルーのフロントマンであるJoey Bad$$がSUPREMEを身につける影響は大きいのだ。

時にトレンド上のファッションリーダーに引用されたり、Joeyのようなストリートジャックに愛されたりしながらもいわゆる”リアルさ”を残しながら変化していくストリートブランドであるSUPREMEにとって、ボックスロゴデザインのオーセンティックなアイテムはそんな”リアルさ”を担保している最大の武器と言えるかもしれない。

 

 

 

最後に。

本文ではSUPREMEについてのみ言及したが、先日BAPEadidas Originalsとコラボしてスニーカーを発売した際も渋谷で延々と続く行列ができていたようだし、ストリートブランドそのものの人気は健在のようである。”憧れのアイテム”を手に入れるため並ぶフリークたちがどんな心境かは定かでないが、オシャレに着飾る芸能人やモデルたちに都合よく引用されることのある中で、お気に入りのストリートブランドの"リアルさ"については是非見誤ることなく愛用したいものである。

 

 

↓先日渋谷で大行列を生んだ一足

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本文作成中に聴いた一枚はPRO ERAクルーの新作。

Flytrap

Flytrap

  • CJ Fly
  • East Coast Rap
  • USD 9.99

 

www.youtube.com

Joey Bada$$を聴いたことがない方は是非チェックを。↓↓↓

 

B4.Da.$$

B4.Da.$$

 

 

2016年 チェックすべきHIPHOP ALBUM 10選(国外編)

HIPHOP 音楽 ヒップホップ RAP ラップ

はじめに。

とにかく話題が多かった2016年も残すところ2週間ほど。既にPitchforkやSPINなど、USの音楽メディアはそれぞれ一年の総括を発表している。

 

B-BOYであれば"マイクの本数"で評価を行うSOURCEマガジンを愛読したことのある人も多いと思うが、ご存じない方のために説明しておくと、USの音楽シーンにおいてはアーティストが発表した作品の批評を行うメディアが存在しており、それぞれが独自の形式で批評を行いそれなりの影響力を持つ。日本で音楽作品の批評を行う影響力のあるコンテンツを筆者は知らないが音楽以外に目を向けると、例えばキネマ旬報の映画批評やファミ通クロスレビューゲーム批評など批評コンテンツは存在している。

 

そんなUS音楽作品批評のプロである各メディアの記者が本年リリースされた音楽作品をどう評価したのかを知りたいのであれば下記リンクをチェックしてほしい。

 

(※ USサイトのため全て英字だが、英語がからっきしの筆者でもランキングは理解可能なのでご安心を。)

 

SPIN誌の年間優秀アルバムベスト50↓

www.spin.com

 

Pitchforkの年間優秀アルバムベスト50↓

pitchfork.com

 

本文はこういった記事に触発されて、音楽をこよなく愛す筆者もHIPHOPに限って2016年にリリースされたものの中から10枚のアルバムを推薦するものである。

 

以下紹介。

御託ばかり並べても仕方がないので、早速10選を紹介していく。これらはランキングをつけて並べているわけではないので注意してほしい。

 

(※表記は全て"アーティスト名 / アルバムタイトル"とする)

 

 

  • Noname / Telefone

www.youtube.com

 

フィメールMCのNonameによるフリーミックステープ形式で発表されたデビュー作。どこかノスタルジックで牧歌的雰囲気のトラックと彼女の無理していないゆったりとしたRAPが相性抜群です。HIPHOPとしてよりむしろオルタナやドリームポップのような趣もあり門外漢の方も聞きやすいのではないかと思うが、歌詞内容はなかなか詩的かつメッセージ性が強いようで実際はHIPHOPとしての芯が強い作品なのかもしれない。彼女の詳しい生い立ちや作品の内容に関しては、渡辺志帆氏が”INSIDE OUT”内で語った様子を文字起こしした記事があったので興味がある方は是非。

またフリー(無料)ミックステープとしてリリースされた作品なのでこちらでまだダウンロードできるようである。ダウンロードの際は自己責任でお願いします。

 

 

www.youtube.com

 

HIPHOP好き、いや音楽好きには説明不要とも言えるATCQの"最後のアルバム"。今年の10選を選ぶ上で一切迷う余地のなかった一枚である。個人的な思いを書かせてもらえば、ATCQの96年リリースされた4枚目のアルバム"Beats, Rhymes and Life"は全てのHIPHOP作品から10枚を選べと言われたときにも選ぶほど好きだ。いまだに聴いているし、おそらく死ぬまで聴くだろう。ATCQについて細かく分析する気はない、とにかく偉大なRAPグループであるから検索すれば五万と記事はヒットするだろう。HIPHOPを聞かない全リスナーにも決してとっつきにくいサウンドではないので、1ミリでも興味があれば聴いてほしい。きっとHIPHOPの魅力にハマる足がかりになる。

この作品自体にもほんの少し触れておこう。98年リリースの"The Love Movement"以降グループの体をうまく保てていなかったATCQだが、この作品は今は亡きファイフも参加しているし、音の鳴り自体は時代の変化でクリアになったものの元の持ち味はしっかり残し、更には今をときめくKendrick LamarやAnderson .Paakをフィーチャーすることによって往年のヘッズと新しいリスナーどちらも満足させる出来と言える。チェックしてないならば即ポチッ!!の一枚である。R.I.P. Phife Dawg

 

↓即ポチッ!!

ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス

ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス

 

 

↓筆者の個人的な思い。 

ビーツ,ライムズ&ライフ

ビーツ,ライムズ&ライフ

 

 

 

  • Chance The Rapper / Coloring Book

www.youtube.com

 

ここ3年ほどの間に才能を爆発させているChance The Rapper待望の作品であった今作は、非常に"高品質"なHIPHOPアルバムと言える。客演も込み込みで作品中いろいろな音楽の方向性にチャレンジし見事に成功しており、全体にキャッチーさを保っているため踊れる内容に仕上がっている。3年前の話題作"Acid Rap"、一昨年Chance The Rapper & The Social Experiment名義で発表された"The Social Experiment"、加えて昨年Donnie Trumpet & The Social Experimentとして発表の"Surf"と彼のキャリアを順を追ってチェックすると、彼のスキルの進化や媚びることなく多くの人々にアプローチできるようになっていく様子がよくわかると思う。また、さすが新時代の申し子ともいうべきか全ての作品を無料公開していることもリスナーとしてはありがたい限りである。上記のタイトル名をクリックすることでダウンロードページにリンクするようにしたので是非。紹介したColoring Bookはこちらから。例のごとく、ダウンロードは自己責任で。

改めて、↑のMusic videoも素晴らしい出来である。

 

 

  • Kamaiyah / A Good Night in the Ghetto

www.youtube.com

オークランド発のフィメールMCのKamaiyahがリリースした本作にはかなり衝撃を受けた。一言で表すと「懐かしい」のである。サウンド・RAP・Music videoなど全てが西海岸でHIPHOPが隆盛を迎えた90年代の匂いを強く放っていて、好き者にはたまらない出来なのである。しかしながら90年代のマネごとにとどまっているのかといえばそういうわけではない。90年代をそのまま現代に持ってきたのではなく、90年代マナーをしっかり踏襲しながら作られた紛れもない新作なのである。ネタ色の強いシンセサウンドにだるそうなフローが乗っかりローライダーの気分をがっつり味わえる温故知新の一枚。彼女の今後のキャリアも注目せざるを得ない。なんと本作も無料公開、素晴らしい時代になったものだ。ダウンロードページへのリンクはこちらから。自己責任!

 

  • Bas / Too High To Riot

www.youtube.com

 

ここから先は筆者の好みを強く反映しているためバランスを欠いた選出となることをご了承いただきたい。レーベルDreamville Recordsに所属するBasはJ.Coleの盟友。であれば新作をリリースしたばかりのJ.Coleを選ぶべきという向きもあるかもしれないが、個人的にこの作品の持つ絶妙なバランスが気に入っている。サウンドプロダクションのダウナーな印象を、フックのキャッチーさや時折見せるBasのメロディアスなフローが持ち上げ適度にドラッギーなのだがギリギリのところでコントロールされているので聴いていて気持ちが塞ぐことはない。それどころか妙に聴き心地が良いのである。既に支持されているJ.Cole(炎上の件はさておき)やいぶし銀のCozzに隠れていた存在のBasがしっかりと才能の価値を示した作品として評価できると思う。露骨にチルアウトやレイドバックを思わせる内容ではないが、ゆったりとくつろぎながら聞いてほしい。

 

 

Too High to Riot

Too High to Riot

 

 

 

 

  • Chuuwee & Trizz / AmeriKKas Most Blunted 2

www.youtube.com

 

サクラメントのMC ChuuweeとTrizzのコラボ企画第二弾。恥ずかしながら筆者のリサーチ力と英語力では彼らの詳しい情報には辿りつけない。だが、Chuuweeに関して言えば何本かミックステープを発表しており、そのプロダクションクレジットがどうにも筆者の好みであったため知っていた。これまでの作品の方向性からこのコラボ企画が始まるまでてっきりデトロイトあたりのMCと思っていた(厳密にはSahtyleをフィーチャーしていることに違和感を抱き調べるまで)。もともとChuuweeの高めで少し粘着質な声がものすごくツボで、Trizzと共作するにあたって、タイトル通り煙モクモクな感じをコンセプトにすることなり、結果としてそれがいい方向に出たように思う。いわゆる"ドープ"な作品なのだが、残念なことにTrizzにはまだイマイチ興味を持てていない。Trizzはソロプロジェクトが進行しているということなのでそちらもチェックしてみたい。

 

 

Amerikka's Most Blunted 2 [輸入盤cd] [bs-020]

Amerikka's Most Blunted 2 [輸入盤cd] [bs-020]

 

 

 

  • Jigmastas / Resurgence

HIPHOP好きは一度は世話になったであろうDJ SPINNAとMC KRIMINULのタッグJigmastasの復活記念の盤。2003年から録り貯めていた未発表曲のコンパイルということなので完全新作というわけではないが、往年のB-boyであればヨダレが垂れるようなドラムブレイクの質感や独特の浮遊感のあるプロダクションは「さすがSPINNA氏」と脱帽せざるをえない。年内に完全新作の"Stellar"をリリースする予定と耳にしたのは本年の上半期、その後続報がないので期待の意味も込めて選出した。ビルボードチャートにランクインするものしか聞かない方も、Music videoすらないアングラメイドの作品にドップリと浸かってみてはいかがだろうか。

 

 

Resurgence

Resurgence

 

 

 

 

www.youtube.com

 

変態Tyler the Creator率いるOFWGKTAのDomo Genesisのスタジオアルバムとしては初のリリースとなる本作。OFWGKTAはアパレル展開しているため、HIPHOPを聴かなくともストリートファッションに興味がある人であれば知っている人も多いのではないか。他メンバーであるがEarl Sweatshirtの13年リリースの"Doris"のおどろおどろしい作風は筆者のお気に入りだ。そんな才能あふれるアーティスト集団OFWGKTAファミリーのDomo Genesisの本作は先にリリースされたTRAPテイストの強かった"No Idols"(これはこれで傑作だった)とガラリと雰囲気を変えている。ダンサブルでキャッチーでバランスが取れているということで、先に選出したChance The Rapperとどちらかを選出外にすることも考えたが、内容は当然違うし「良いものは良い」ということで選出した。共通して言えることはどちらも開けた作風なので多くのリスナーにとって親しみやすいということである。

 

Genesis

Genesis

 

 

↓ OFWGKTAクルーの中でもお気に入りの一枚

Doris

Doris

 

 

 

  • Nolan the Ninja / He(art)

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「軟弱なRAPばかりじゃないか」という声が上がらないようにゴリゴリの男気溢れる一枚もセレクトしようということでデトロイトのホープNolan the Ninjaを選んだ。本作は客演クレジットからもわかるように新旧のデトロイトMC陣が名を連ねる盤石ぶり。J Dillaという天才の存在は例外として、8mileの舞台であることから連想できる通り工業都市デトロイトのスタイルはとにかくハード。音鳴りが太いミニマルループのトラックには、パンチの効いた迫力のあるフローがよく合う。例に漏れず、Nolan the NinjaのRAPは破壊力満点で、聴けばフードをまぶかに被りただただ首を振りたくなるような出来栄えだ。HIPHOPを普段聴かない人にとっては敷居が高く、ノイジーに感じるかもしれないがオーセンティックなHIPHOPであることは間違いないので一度はチャレンジしていただきたい。残念なことにCDでのリリースはなく、カセットかアナログ12inchもしくはBandcampかリージョンUSのiTunes storeでの入手となるので面倒ではあるが興味がある方はチェックして損はないだろう。

 

He(Art)

He(Art)

  • Nolan The Ninja
  • Hip-Hop/Rap
  • USD 9.99

 

↓こちらはアナログ

He [12 inch Analog]

He [12 inch Analog]

 

 

 

  • Christmaz & Figub Brazlevic / Ego & Soul

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最後は大穴中の大穴。スウェーデンストックホルムのMC ChristmazがドイツはベルリンのビートメーカーFigub Brazlevicとタッグを組んで作り上げた一枚。世界は広いと言うより他ない。USシーンと離れたところで作られたこともあってかFigub Brazlevicのサウンドは新しいのか古いのかよく分からない、しかしながらそれがかえってフレッシュな印象を放ち不思議な中毒性を持つ。対するChristmazのRAPも独特の訛りの強い英語が面白く、しかしながらHIPHOPとしての芯が太い。二者の才能がうまく組み合わさり、オリジナリティの高い作品となっている。個人的には最初聴いたときの衝撃はアングラシーンの人気ユニットThe Doppelgangazを聴いたときに受けたものに近いが、それにさらにイビツさを加えた印象と言ったほうが正確か。いずれにせよ、先月末にリリースされたばかりの本作は年の最後を飾るにふさわしい衝撃を与えてくれた。こちらも現時点ではiTunesでの購入になるが、要チェックである。

 

Ego & Soul

Ego & Soul

  • Christmaz & Figub Brazlevic
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1500

 

最後に。

本年も数多くリリースされたHIPHOP ALBUMの中から10枚を選ぶ中で、「メインストリームのものばかりでもいけないしアンダーグラウンドなものばかりでもいけない」と筆者なりにバランスは考えたつもりだ。Kanye WestHIPHOPに興味があればほっておいてもチェックするだろうし、Pusha TにJ.Cole、Danny BrownやVince Staplesなど他にも選ぶべき作品が山ほどあることは承知しているが個人の思いを優先させていただいた。いかがだっただろうか、最後まで読んでいただいたすべての読者に多大なる感謝を。

HIPHOP ALBUM(国内編)やR&B ALBUMなども10枚選定しようかとも考えたが、労力が大きすぎたので気が向けば後日更新しよう。

今シーズンホークスが優勝を逃したワケ

スポーツ 野球 ホークス

日ハム優勝で2016シーズンが終了。

 2016年ペナントレース(パ・リーグ)では、交流戦後に一時はシーズン90勝ペースでぶっちぎりの優勝が予想された筆者(福岡在住)の贔屓チームであるソフトバンクホークスが夏にかけて15連勝するなど怒涛の追い上げを見せた日本ハムファイターズをついにかわしきれず、優勝できていてもおかしくない80勝越えを記録しながらもリーグ2位でシーズンを終える悔しい結果となった。来シーズンに向けてドラフト会議や秋季キャンプはすでに終了し、FA戦線を始めとする人材補強や中米WL(武者修行的意味合い強し)/台湾WL(若手の実戦経験的意味合い強し)、契約更改なども佳境、一応の決着を見せつつあるのが現状である。

 

本文はタイトルの通り、ホークスが優勝を逃したワケを検証し、更にはどのように変われば来シーズン優勝に返り咲くことができるのかを考察することが目的だが、鼻から身も蓋もないことを言ってしまうと、筆者の戯言であって全くもって正確ではないかもしれない。

 

以下本文の前提(飛ばして読んでも良し)。

 まず検証するにあたってチームの戦略を分析するとき、リーグ制を敷く野球では絶対的な分析ではなく相対的な分析が必要になる。

これは例えば、いかに贔屓のチームがヘッポコであっても同じリーグの他球団がそれ以上のポンコツであれば優勝は可能であるし、逆にどれほど戦力を充実させ選手個々人が健闘したとしても他の球団にその上を行く実力を見せられれば優勝はできないのである。特に今シーズンのホークスとファイターズはともに80勝以上しているということなので、比較検証が当然必要といえる。

 

が、それは無理である。

 

筆者は野球記者でなければ、元プロ野球選手でもない、一人の野球好きでしかない。よって筆者の言及するところが素人の域を出ることはない。比較するほどのデータもないし、野球経験を生かした分析(例えばA投手は昨シーズンより肘が上がりリリースポイントが手前になったので球ノビがなくなった。など)もできない。しかしながら、シーズン通して応援してきた思いは強いので、たとえ肌感覚の分析で素人の言及であっても、言いたいことは言いたいのである。

 

以下本題。

 散々言い訳したところで本題。優勝を逃したワケを二つの項目に分けて書く。

 

  • 先発投手の体力不足

今シーズンのホークスの先発投手陣は出足こそ一軍実戦経験の少ない捕手・斐紹を起用したこともあってか少しバタついたが序盤からシーズン折り返しのオールスターまでは皆とても良く投げていたように思う。

特に前半戦の白眉は、東浜。今シーズンついに芽が出たドラ1投手は、交流戦でそれまでピッチング絶好調であった読売巨人軍エースの菅野との投手戦を制し、雨の降る神宮では完璧に近いパフォーマンスを見せ、この時期「エースキラー」などと呼ばれていたことも記憶している。

更に、千賀の先発定着後無傷の連勝も心強かった、"おばけフォーク"はメディアに多く特集され千賀の代名詞になったし、ロッテ戦では相手選手にバットをくるくると回させ翻弄し安心して観戦できた印象が強い。

このように、今シーズン新たに先発ローテに加わった二人の戦力に加えバンデンハーク・武田・中田も昨シーズンと遜色ない出来、とどめに帰ってきたエース和田を加えることで盤石・鉄壁の先発投手陣が誕生したように思えた。

 

しかし、5/31の中日戦を機に体の違和感/不調を理由にバンデンハークが離脱し、岩嵜を先発起用しながらも夏を迎えた頃から先発投手陣が捕まり始めた。7月を境界線にして数字で示すとわかりやすい。

 

  武田(23) 登板27試合 勝利14/敗北8

       うち7月以降の敗北6

    千賀(23) 登板25試合 勝利12/敗北3

       うち7月以降の敗北3

  東浜(26) 登板23試合 勝利9/敗北6

       うち7月以降の敗北5

 

※()内は年齢、記録は2016シーズンのもの

 

3選手の数字を合計すると

  

  勝利35/敗北17 うち7月以降の敗北14

 

となる。3選手ともしっかりと貯金を作っているし、白星(勝利)は救援に失敗すれば消え黒星(敗北)は打線の奮闘があれば消えることを考えれば単純に飲み込める数字ではないのかもしれないが、3選手全ての黒星のうち実に82.3%が7月以降のものという事実は看過できない。

なぜこの3選手だけ取り出して言及するのかといえば、途中離脱したバンデンハークや先発としての登板試合数が10試合に満たない選手を除けば残るのは中田(34)と和田(35)だけなのだが、この2選手に関しては7月以降の失速がないのだ。

 

先ほどから嫌がらせのように選手名に続けて年齢を示しているのは注目していただきたいからである。中田と和田はベテランと断言できる年齢であるのに比べ、武田・千賀・東浜の3選手は将来のさらなる飛躍が十分に期待できる年齢だ。単純に考えると、若い方が体力がありそうにも思えるのだが、そう簡単なものでもないようだ。シーズン中の体のケア、事前準備としてタフな下半身をしっかり作っておくことがシーズン通して戦うには不可欠。3選手は怠っていたわけではないだろうが十分ではなかったということだろう。

 

来シーズンの首位奪還のため、ホークスの秋季キャンプでは体力強化をメインテーマに掲げ積極的に走り込みを行ったことから球団の問題意識もしっかりあるのだろう。オフ中の自主トレも含めて春までに若手投手陣にはしっかりと陸上部として走り込んでもらい、シーズンを戦い抜く体力をつけてもらいたい。

 

 

  • 定着しない正捕手/芽が出ない若手捕手

今シーズンホークスで主にスタメンマスクをかぶった選手は出場試合数の多い順に鶴岡(35)・細川(36)・高谷(35)なのだが、見て分かる通りどの選手もベテラン。ここに次点で食い込んでくる斐紹(24)や来季から登録名を甲斐に変更するという拓也(24)はうって変わって若手選手。つまり間の世代、中堅の捕手がホークスにはいない。シーズン開幕当初は先述した通り斐紹がマスクをかぶることもあったが、リード面で水準に至ってないという判断かすぐに起用されなくなってしまった。

優勝を逃したワケだけを捕手の面から考えると、”正捕手の不在”ということになるのだろうがこの問題は追求していくとどうしても”正捕手たり得る人材の不足”つまり若手捕手が台頭してきていないということにつながる。

 

シーズン序盤から中盤は打撃が好調の鶴岡を起用し、中盤打撃が落ちてきたところでリード面守備の面から細川を起用。それからは高谷が怪我から復帰するまで、細川を起用→投手が打ち込まれる→鶴岡を起用→鶴岡が打てない→細川を起用といったように、チームとして捕手に打撃力を求めているのか守備力を求めているのかはっきりしない起用が目立った。細川は正捕手として起用するには打撃力に乏しく、いかにリード巧者といえど打たれることはある。一方の鶴岡は正捕手として起用するにはリード面で不安を残し、肩も強くないため盗塁阻止率も低く、いかに打撃巧者といえど不振に陥ることがあった。

 

こうした状況の中、球団がこの捕手でいくと決断するのには”成長の見込みがある”ことが必要だったのかもしれない。西武の森やロッテの田村は起用し続けることで成長することを待とうと思わせる能力がある。

細川こそ他球団に移籍したものの来シーズンも主に鶴岡と高谷を起用することになるだろうが、30試合、欲を言えば50試合くらいは斐紹なり拓也なりがマスクを被らなければ、来年よりその先もホークスの女房役は定まらずチームの守備面も不安定となるだろう。

 

斐紹と拓也の更に下の世代についても言及しておくと、球団も次世代の捕手育成の重要性を軽視はしてしないのだろう、2014ドラフト2巡目の栗原、2015年ドラフト3巡目の谷川原に加え今年のドラフトでは3巡目で九鬼を指名するなど、球団も若手人材を充実させファームで誰がスタメンマスクをかぶるのかでさえ、競争は必至である。この中から一人でも台頭してくるのであれば未来は明るいが、捕手育成はとても難しいと聞く。今秋に工藤ホークスとしては初のヘッドコーチに就いた達川には、是非捕手育成の面でもその手腕を存分にふるっていただきたい。

 

最後に。

 大きく二つの項目で優勝を逃したワケについて言及したが、当然問題はこれだけではない。江川・福田・吉村・城所などの起用ではっきりしなかった”三人目の外野手”の問題や、先発投手陣と同様に後半戦捕まることの多くなった中継ぎ陣は森福も移籍し、岩嵜を今後どう起用していくかも含め不安が残る。来季に向けてはベテランとなった内川や松田のバックアップ、とりわけ三塁手である松田の後継者として相応しい人材の育成も待ったなしである。

 

と、ここまで問題点ばかり指摘してきたが希望を持てる点も少なからずある。投手陣では今年のドラ1即戦力投手田中や、今年こそ一軍登板はなかったが去年のドラ1高橋、一昨年ドラ1松本、更には貴重な左腕先発型の笠原など、野手陣ではU-23 WBCで大会MVPにも選ばれた”ミギータ”とも呼ばれている右の強打の外野手の真砂など、来シーズン一軍での活躍が期待できる戦力も直実に出てきているのは確かだ。

 

ファンも悔しい思いで迎えた今オフ。来シーズン優勝を奪還するために、選手には一層の成長を期待している。今から春が楽しみである。

 

 

 

※敬称は全て割愛していますが、本文中に登場する全ての人物に敬意を表します。

 

本文作成中に聴いた一枚

 

 

Pavo Pavo / Young Narrator In The Breakers (Pop)

 

 

YOUNG NARRATOR IN THE

YOUNG NARRATOR IN THE

 

 

日本のMC BATTLEの限界

音楽 HIPHOP RAP ラップ ヒップホップ MCバトル 日本語ラップ フリースタイルダンジョン

今年の漢字

 今年の漢字が発表された。「金」ということだ。オリンピックの金メダルから連想されたようだが、腑に落ちる人は少ないのではないか。「金」では弱い。

 

自然災害、芸能ゴシップ、アメリカ大統領選、大ヒットしている邦画や東京都の腐敗など、ザッと思いつくだけでも年を飾る要素として不足ないほど印象の強いトピックがずらりと並ぶ。話題に事欠かない一年だった。

 

しかしながら話題性の高さにおいて、他に類を見ない一年だったので逆に漢字一字で締めくくることは難しかったのかもしれない。皆さんも関心の高い事柄が少なからずあったのではないか。

 

筆者自身もいろいろな時事に関心をもった一年であったが、B-BOYとしてはやはりテレビ番組「フリースタイルダンジョン」の人気には注目をせざるをえない。この一年で、MC BATTLEの社会的な認知度や関心を爆発的に上げたコンテンツと言えるだろう。

 

以下少し昔話。

 現在B-BOYを自称する筆者(アラサー)が初めてMC BATTLEというものに出会ったのは2002年公開の映画"8mile"であるが、当時はHIPHOPそのものに没頭していなかったのもあってか「こんなものもあるのか」程度の印象だった。しっかりとした魅力あるコンテンツとして認知したのは2006年のUMBという国内MC BATTLEの大会だったのを覚えている。

 

国内でもMC BATTLEの歴史を遡れば当然B-BOY PARKなど他にもあるだろうが、あくまでの筆者との出会いは2006年のUMB。現在もバリバリ活動中のRAPPER、HIDADDY(韻踏合組合)とFORK(ICEBAHN)が一回戦からぶつかり、今でもベストバウトに数える人がいてもおかしくない好カードは、RAPの魅力にハマりつつあった筆者をひきこむには十分すぎた。

 

今振り返っても、友達から借りたDVDで出会ったMC BATTLEは、2006年時点で相当に成熟していたように思う。前に上げた二者はともに音数のある韻を確実に踏むハードライマーであったし、GOCCI(LUNCH TIME SPEAX)やFEIDA-WANはタフな気持ちが前面に出た熱量の高いRAPPER、ポエトリーリーディング調の25時の影絵、のちにマルチな才能を爆発させるPUNPEEはコミカルなRAPをしっかり決めていた。

 

ここで全ては紹介しないが、RAPスタイルがそれぞれにあり、ただ単に「どちらがRAP口喧嘩が強いか」ではなく「どちらが格好良く対戦相手を翻弄するか」というエンターテイメントが成立していたのは間違いない。

 

UMBの認知度は、当時高校そこらの筆者の体感では「B-BOYであれば知っている」程度なものだった。筆者にDVDを貸してくれた友人はスケーターで周りにB-BOYがたくさんいたし、UMBを知っていた人物のほとんどは服屋の店員、クラブ遊び仲間や先輩など、ストリートコミュニティが認知のきっかけを与えていた。

 

そんなUMB自体も徐々に認知度を上げていき、千原ジュニアが何かの番組で紹介したり、サブカルの入り口ヴィレッジバンガードでDVDが展開されることによりB-BOY以外の好き者層も取り込んでいった。

 

 

 

ULTIMATE MC BATTLE GRAND CHAMPION SHIP 2006 CLUB CITTA [DVD]

ULTIMATE MC BATTLE GRAND CHAMPION SHIP 2006 CLUB CITTA [DVD]

 

 

以下現在の話に戻る。

 この一年のフリースタイルダンジョンの成功の前に、シーンに既にそういった機運が高まっていたことにも触れなければならない。1つは、MC BATTLEが若年層とサブカル層をまとめて獲得することに成功していたこと。

 

BSスカパー!の人気番組BAZOOKA!!!の番組内企画「高校生RAP選手権」は出場できるのが高校生世代のRAPPERのみという言わばRAPの甲子園的なMC BATTLEの大会。これが爆発的にウケた。

 

もともとBZOOKA!!!という番組自体サブカルチャーアウトサイダー的なトピックを扱う番組だったこともありサブカル層の口コミを呼んだ。出場するのが高校生世代であるならば、当然大会も白昼開催。高校生の観客が多い。口コミの広がるスピードはSNSの登場、スマホの普及によりここ10年で飛躍的に高まった。これによって「今までHIPHOPに触れてこなかったがMC BATTLEにハマった」という人が加速度的に増えたと言える。

 

フリースタイルダンジョン成功の素地はまだある。MC BATTLEシーンが決して衰退せずむしろ着々と地下活動していたこともその1つと言える。若かりし頃の筆者を魅了したUMBは、主催団体の不幸なドタバタに遭遇しながらも現在も存続しているが以前ほど注目度は高くない。しかしながら、戦極MC BATTLEや罵倒など他のMC BATTLEの大会が着実に認知度を高め、規模を少しずつ大きくし今や全盛期のUMBにも劣らない人気を誇る。

MC BATTLEの成長には当然、出場するRAPPERのスキルの向上が必要であって、そういう意味でこのようなMC BATTLE開催団体の健闘が多くの実力のあるMC BATTLE RAPPERを生んだと言えるし、常にあらゆるところでMC BATTLEの大会が行なわれている状態こそがここ10年で広まったTRAPやGRIMEなどにも適応するフローをシーンにいるRAPPERに要求した。

 

このように単純にフリースタイルダンジョンがテレビ番組として人気が出たことはある種必然とも言える要素がシーンには備わっていた。

 

ここから本題。

 さて、前置きがクソがつくほど長くなってしまったが、筆者がこの知ったかぶりも甚だしい駄文で何が言いたいかといえば、「MC BATTLEよどこに向かっているのか?」ということである。

フリースタイルダンジョンの人気により(時として自主規制”通称:コンプラ”だらけで意味不明なカードもあるが)MC BATTLEはコンテンツとしてテレビで通用することが証明された。今後さらなる成長が”ショウビズ”として期待出来る。

 

ん。それでいいのだろうか。

 

無論、音楽シーンというものは誰かがディレクションするものではなく、シーンの参加者が自分の思うままに好き勝手にプレイした結果醸成されていくものであるし、その方が健全であるとは思うが、MC BATTLEがショウビズとして一人歩きしていくことは日本のHIPHOPそのものにとっては毒なのではないかと不安になる。

 

先日M-1グランプリという周知の漫才No.1を決める国民的ショーレースがあった。個人的には出場コンビ全て面白くて感心した。やはり日々劇場や営業先などで漫才に研鑽を積む芸人たちの晴れの舞台、目指すべき場所だけあって芸の輝きも一際だ。

ところで、漫才をする芸人にとってM-1の優勝は悲願だろうが、ゴールではない。そこから、ありとあらゆる仕事にチャンスが派生するきっかけでもあるだろうし、M-1で優勝を目指す動機の本分がそこにある芸人も少なくないだろう。

 

ではHIPHOPに置き換えたらどうだろうか。

このままMC BATTLEがコンテンツとして評価され、テレビ番組の特番として日本一のMCを決める大会がゴールデンタイムに放送されたとしよう。賞金は1000万。この大会にRAPPERが出場する目的は何か。日本一MC BATTLEで強いMCという名誉か賞金1000万か、はたまた優勝をきっかけにメディアに引っ張りだこの人気者になることか。いずれにせよB-BOYの一人として筆者は不健全に思う。

 

日本一MC BATTLEで強いMCというのであれば、既に違う形でKING OF KINGSという大会が存在しているし、社会的人気や1000万が欲しいというのであればミュージシャンならば自分の作品で掴みとるべきだ。なにも音楽だけで1000万稼げというわけではない、作品を評価され支持されれば必然的に他の収入源も獲得できるはずだ。

 

誤解を恐れて保険をかけておく。筆者はMC BATTLEそのものの否定は一切しない。自身もMC BATTLEに魅了された一人であるし、作品の制作費を稼ぎたいRAPPERにとっては必要なチャンスだ。しかしながら、これ以上MC BATTLEシーンのみが肥大化していくとHIPHOPシーンから隔絶され、職業:RAPPERではなく職業:BATTLE MCという者を生むことになる。まるでダンスのHIPHOPが体育の授業に盛り込まれるが如く本末転倒な事態を生むことを危惧しているのである。

 

よくMC BATTLEの対戦相手を罵しる「盤(作品)作ったこともないくせに」であるとか「BATTLEだけでライブはクソ」のようなフレーズを耳にするが、「だからなんだ」と開き直る者が現れたら終いだ。MC BATTLEが全大衆向けコンテンツに変化していく過程でB-BOYにしかわからない表現やワードプレイで観衆を沸かせる"HIPHOP IQ"の高い戦いは失われていき、より聞く者にとって分かりやすいキャッチーな内容が増えていくだろう。なぜなら、聞き手が変わるならば戦い方も変えなければ勝負に勝てなくなるからだ。HIPHOPの持つリアリティそのものが変化しているという解釈をする人もいるだろうが、筆者は賛同しない。そんな迎合は断じてHIPHOPではない。

 

最後に。

 フリースタイルダンジョンという番組に賛否があるのかといえば筆者にはない。テロップを入れて、コンプラだらけで、観衆ゲストに芸能人がいて、どれもテレビ番組で戦うには必要な要素なのだろう。観てみると実際に面白いカードもある。審査員が一応の事情通であることもバランスを取ろうと工夫した結果だろう。

 

ただこの一年で、作品で名を売っていないRAPPERをバラエティ番組でちらほら見かけたり、UZIQさまに出演していたり(これはこれで問題無い)、違和感を覚える機会がぐっと増したことは言うまでもない。

 

本文はMC BATTLEシーンの行く末を案じるものであって、だれが犯人であるなどと糾弾するものでは無い(強いて犯人を挙げるとすればYoutubeか)。しかし、MC BATTLEとHIPHOPそのものの隔絶を止める手段は何か無いものか。シーンは今後も目が離せない。

 

 

 

※敬称は全て割愛していますが、本文中に登場する全ての人物に敬意を表します。

 

本文作成中に聴いた一枚

 

Dave East / Kairi Chanel (Rap)

 

カイリ・シャネル

カイリ・シャネル

 
Kairi Channel

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