EYE KNOW

福岡在住B-BOYの音楽・映画・スポーツに関心を寄せて過ごす日々の観察記録

2017年2月よく聴いた音楽

 

3月も既に10日も経過してしまいましたが、先月よく聴いた音楽(主にアルバム作品)を紹介します。2月は洋楽にビッグボム級の作品がとにかく多くて、そういった作品は主要音楽メディアをチェックしている方ならば説明不要と思いますのでタイトルとMVのみの紹介とさせてもらいます。

 

この記事の前提についてはお手数ですが先月のエントリを参照してください↓↓

 

nino-brown.hatenablog.com

 

(※1 以下表記は全て アーティスト名 / タイトル名(ジャンル)

 

(※2 以下作品の購入リンクはフィジカルリリースのあるものはamazon、その他はitunes)

 

洋楽(8作品)

  • Sampha / Process (RnB)

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Process [ライナーノーツ / 歌詞対訳 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (YTCD158J)

Process [ライナーノーツ / 歌詞対訳 / ボーナストラック収録 / 国内盤] (YTCD158J)

 

 2月ビックボム級作品その1。UKのSSW待望のデビューアルバム。説明は割愛。

 

 

  • Future / Future (Hip-Hop)

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FUTURE

FUTURE

  • フューチャー
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1600

 今年のヒップホップシーンの主役。南部はアトランタのスターFutureの2週連続リリースの一作目であり"鋭"の一枚。2月ビッグボム級その2。詳細の説明は割愛。

 

  • Future / HNDRXX (Hip-Hop)

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HNDRXX

HNDRXX

  • フューチャー
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1600

Futureの2週連続リリースの一作目であり"穏"の一枚。2月ビッグボム級その3。詳細の説明は割愛。

 

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Dirty Projectors

Dirty Projectors

 

 日本のフェスシーンでもおなじみ現代音楽について考えさせてくれるバンドDirty Projectors。2月ビッグボム級その4。詳細の説明は割愛。1月のMigosの作品と合わせてとても興味深い文章がありますのでリンク貼っておきます。

 

  • Thundercat / Drunk (RnB)

 

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Drunk [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤]  (BRC542)

Drunk [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC542)

 

 好き者から絶大な支持を得ているレーベルBrainfeederからプロデューサー・ベーシスト・シンガーとマルチな才能を持つThundercatのジャンルクロスオーバーな一枚。2月最後のビックボム級。詳細の説明は割愛。

 

  • Stormzy / Gang Signs & Prayer (Grime)

 

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Gang Signs & Prayer

Gang Signs & Prayer

 

 これもビックボム級と言えるかもしれないけどメモ程度に。昨年のビッグボムSkeptaの"Konnichiwa"によって一気にオーバーグラウンドにも認知されたUKのGrimeシーンだが、昨年の勢いそのままにGrimeシーンから世界レベルで発信された話題作。Stormzyのデビューアルバムではあるが、本人はMOBOのBset Grime Awardなど賞をいくつもコレクトする正真正銘のプレイヤー。Grime独特の小刻みに刻むフローやダークな雰囲気を残しつつも、キャッチーな要素もサウンドに散見できとても開けた内容。Kehlaniをフィーチャーしているなどトレンドもしっかり押さえつつもタイトに仕上がっている。

 

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Roadhouse 01

Roadhouse 01

 

 個人的激推し盤。現時点で今年ダントツのベストです。Allan Raymanはインタビュー記事がなくとにかく情報の少ないアーティスト。ワイオミング生まれでトロント在住らしい。一聴すれば忘れられないだろう個性的な歌声と、時にノスタルジックに時に今風に展開されるサウンドの調和が実に映画的で、盤を通して聴くとサントラというより一本の映画を見た気分になる。ニック・ケイブの妖しさ・エロさを少し思い出したが、それよりもぐっと聴き手にアプローチしてくる印象。この人はきっとありとあらゆる音楽ジャンルに影響を受けているだろうと、容易に推察できる含蓄ある音の展開も脱帽です。それでいてライブではアコースティックでもバッチリ決めていて憎い。アラン・レイマンだけに焦点を当てた別エントリを書くか検討中。

 

  • Blaise Moore / Laurence (Altenative)

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Laurence

Laurence

 トロントの新人シンガーBlaise Mooreのデビューアルバム。MV楽曲の世界観の通り、作品全体通してちょっぴりドラッギーでダルく、セクシーで中毒性は十分。ベースが効いていて、雨降りの昼下がり室内から窓の外を眺めているようなどんよりとした気分になるがそれがたまらない。それにしても最近は出てくる才能のほとんどがトロントで活動していて驚く。もはや現代音楽の中心はUSではなく、世界一の音楽都市はトロントなのかもしれない。

 

 邦楽(2作品)

  • JJJ / HIKARI (Hip-Hop)

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HIKARI

HIKARI

 

 先月の良盤KID FRESINO"Slave"に続いてのリリースとなったFla$hBackSのラッパー/トラックメイカーであるJJJの今作は音づくりからいろんなベクトルを感じることができる。ドープ/ハーコー/キャッチー/メロー/スムースと一作に多様な表情を見せてくれる。KID FRESINOの先述作にも言えるがアンダーグラウンドシーンのホープとして注目されたプレイヤーがアンダーグラウンドに止まることなく、かといってセルアウトすることなく自身の才能や可能性を自由に解放しネクストレベルに進んでいく様はヘッズの一人として嬉しい限りだ。Campanellaといいアングラ発のアーティストのこういった傾向の先駆けはPUNPEEや鎮座、田我流あたりになるのか、いやあまりしっくりこない。とにかく彼らがヒップホップという音楽と自身のキャリアに対していかに真面目に向き合っているかがよく分かる。

 

  • YUKSTA-ILL / NEO TOKAI ON THE LINE (Hip-Hop)

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NEO TOKAI ON THE LINE

NEO TOKAI ON THE LINE

 

 本場USヒップホップシーンにおいて今最も勢いがあるエリアといえばMigosやFutureが引っ張るアトランタを中心としたサウスか、はたまたノーネームやチャンス・ザ・ラッパーが活躍するシカゴあたりになるのだろう。日本はどうだろうか、数年前まで福岡親不孝通りのシーンや仙台、北海道と全国のアングラシーンにまとまった活動が目立っていたが最近はラッパーが個人レベルで地元をレップすることはあってもエリアごと活動的に動いてる様子を感じることは少なくなった気がする。そんな中にあって名古屋のシーンは活発だ。昨今ブームのバトルシーンを牽引するプレーヤー・呂布カルマに、作品で新たな可能性にチャレンジするCanpanella、さらにはコアなヘッズを唸らすイズムの持ち主C.O.S.A.など、才能も粒ぞろいな上それぞれが横にしっかりと繋がっていて強いユニティーを感じる。YUKSTA-ILLもそんなフッドポッセの一員なのだが、彼の才能もかなり突き抜けている。聴き取りやすく時に懐かしく感じるフローの持ち主だが、デリバリーはフレッシュでビートアプローチも多彩。名古屋の才能の中でも最も器用なスキルの持ち主と言える。本作はそんな才能が遺憾なく発揮されていて聴き応え十分。詞にも登場するノリエガ感満載な"Let's Get Dirty feat. SOCKS"など聴き手を飽きさせない遊び心もあるのでリピート必須だ。

 

 

 

2月は洋楽ばかりを聴いていてあまり邦楽をチェックできていません。洋楽は一言でオルタナティブと言ってしまうにはあまりに失礼な程に音楽的含蓄がある考え抜かれたジャンルレスな出来の高尚な現代音楽が多かった気がします。

2017 グラミー後記・感想 雑感爆発

Adele主要部門三冠

 本エントリを書くにあたっては、前のエントリにて書いたことを前提としたいので未読の方はお手数ですがそちらを先に読んでいただけるとありがたいです。↓↓

 

nino-brown.hatenablog.com

 

今回のグラミー受賞結果、主要4部門は以下の通り

 

Album of the Year(最優秀アルバム賞)←アルバム演奏者および製作チームに授与。

 

Adele – 25

 

Record of the Year(最優秀レコード賞)←シングル曲演奏者および製作チームに授与。

 

Adele – Hello

 

Song of the Year(最優秀楽曲賞)←シングル曲の作詞者、作曲者に授与。

 

Adele – Hello

Best New Artist(最優秀新人賞)←この1年で著しい活躍をみせた新人に授与。

 

Chance The Rapper

結果から言うと、アデルが主要部門に関してノミネートされたものは総ナメ、HIPHOPのアーティストからはチャンス・ザ・ラッパーが新人賞を受賞。筆者の予想的中率は五分五分という何とも中途半端な結果になりました。まあ、予想が当たったかどうかなんてどうでもいいんです。どうでもよくなるくらい今回のグラミーは考えさせられるものだったと思います。

 

今回のグラミー、筆者は幸運にもリアルタイムで、なおかつ”wowwowぷらすと”のソーシャルビューイングでの解説つきで見ることができたわけですが、感想として言いたいことが100個くらいあります。100個くらいあるんですが、それぞれが矛盾していたり不確かな直感であったりするので整理するのがとても難しいです。それでも、自分なりに今回のグラミーの感想と今後のグラミーがどういう意味を持つのかついて書こうと思います。

 

 

今回のグラミーが抱えていた背景

 

 まず最初に、大きな保険をかけておくと「アデルは主要部門の三冠にふさわしくなかった」などということは1ミリも思っていません。楽曲としての"Hello"やアルバムとしての"25"はどちらも素晴らしい作品であり、グラミーを獲得しても何も不自然のないほど高い出来であるということは全世界の共通認識だと思います。それでも、それでも今回は主要部門の中から1つだけでも良かったのでビヨンセにあげて欲しかった(特にアルバム賞は)。グラミーが今後もアメリカの最も誉れ高い音楽賞であり続けるためには、ビヨンセの受賞は重要なことだったと思います。それゆえグラミーの今後の方向性を好ましくない形で決定付けてしまってような印象を受けてしまいました。では一体なぜ筆者がそう思うのか、ということなんですがそれにはまず今回のグラミーが抱えていた背景を説明しなければなりません。

 

 

 前エントリでも少し触れましたが昨年最優秀アルバム賞をケンドリック・ラマーが逃したとき、筆者は深く落胆しました。それほどアルバム"トゥ・ピンプ・ア・バタフライ"は突き抜けた素晴らしさを持った作品でした。深く突っ込んだ解説は調べるとそれなりのものがすぐに見つかると思いますので是非調べてみてください、筆者からものすごく端的にコメントさせてもらうなら”音楽的にも間違いなくヒップホップのネクストレベルに踏み込み、メッセージそのものやその表現方法に至るまですべてが強烈で象徴的な傑作”です。ヒップホップ史のみならず音楽史に刻まれる作品と断言できます。そんな作品が昨年のグラミーでテイラー・スウィフト相手に賞を取り逃がしたのです。

 

テイラー・スウィフトはみなさんご存知だと思いますが、彼女のアーティストとしての出自がカントリー・ミュージックであることはあまり知られていません。付け加えて、テイラーの生い立ちはとても恵まれていて、裕福な家庭で乗馬なんかを嗜みながらのびのびと育っています。コンプトンでドラッグやギャングに囲まれながら生まれ育ち、ラップの才能を開花させたケンドリックとは対照的と言えます。テイラーの作品"1989"について悪く言うつもりはありませんしウェルメイドなポップアルバムとして評価もできるとは思いますが、音楽ジャンル/人種/貧富いろいろな面で対照的な二者の間でグラミーがテイラーを選んだことは大きな波紋を呼びました。ただでさえヒップホップ作品がグラミーを獲ることは難しいとされている中でケンドリックの傑作も獲れなかったという結果によって、フェアではないとグラミーを見限ったアーティストも出てきました。今年のグラミーを欠席した、ドレイクやカニエ・ウエストやフランク・オーシャンがその例です。

 

もう一つ触れておかなければならないことは、近年のアメリカの人種問題についてです。アメリカでは人種問題はいつの時代でも議論される永遠の課題ですが、2012年に当時高校生だったトレイヴォン・マーティンが警官によって射殺される事件が起きて以降”ブラック・ライヴス・マター(黒人の命の問題)”に関する運動が盛んになりました。そして昨年もそのデモ活動の中、警官との衝突により2名の黒人男性が警官に射殺されるなど悲しい事件が今でも後を絶ちません。こういった人種問題の”リアル”がアーティストの楽曲の制作活動の動機になり、そういう歴史的文脈の中で昨年ノミネートの"トゥ・ピンプ・ア・バタフライ"や今年ノミネートのビヨンセの"レモネード"が生まれたことに疑いの余地はありませんし、そういった作品をノミネートにあげている時点でグラミーもこういった問題と決して無関係ではありません。

 

今年新大統領に就任したトランプ氏の言動もときにこういった問題を少なからず刺激していることから、昨年ケンドリックがグラミーを取り逃がしたことに落胆し、今年こそはビヨンセが獲るだろうと期待していた人々はたくさんいたでしょう。現に最優秀アルバム賞の受賞スピーチでアデル本人が他のノミネートされたアーティストはそっちのけでそのメッセージやクオリティの高さからビヨンセこそふさわしかったと言及していることが何よりも象徴的でした。

 

blogos.com

 

グラミーの本質

 このような背景から今回のグラミーの受賞結果は多くの人々を落胆させ、現に米メディアでは”白すぎたグラミー賞”や”グラミーの抱える人種問題”などという穏やかではない見出しが並びました。では本当にグラミーが人種差別的かどうかということですが、筆者は必ずしもそんなことはないと思っています。

 

現に今回最優秀新人賞はチャンス・ザ・ラッパーが獲っているわけですし、昨年のケンドリックや今年のア・トライブ・コールド・クエストの授賞式でのライブパフォーマンスを認めている時点で少なくとも直接差別的なポリシーは一切ないと思います。「でも結果がメタ的に差別構造を露見させているじゃないか」という方も多いかと思いますが、これについても筆者自身は否定的です。前エントリの”グラミーの傾向と対策”という項目で書いたことですが、グラミーは”白人に賞をあげたい/黒人に賞をあげたくない”のではなく”誰かにとって角が立つ、物議をかもすような作品を避ける”傾向があるのだと思います。

 

審査委員の投票によって結果が決まることから口裏を合わせているわけではないですが、1万3000人と言われている審査委員のNARASの会員の中にそういった雰囲気があるのではないでしょうか。NARASの会員が”いかに高齢で、いかに白人が多いか”知る由もありませんが、伝統的なジャンルが強く、強烈なメッセージを持つものを避けるグラミーの傾向が昨年・今年と続いて音楽ファンの”民意”とは異なる結果を出してしまったわけです。

 

これは筆者の感覚ですが何か直近の大統領選挙のことを思い出しました。先のアメリカ大統領選挙はトランプがヒラリーに圧勝となったわけですが、いざ大統領に就任するとその支持率は46%と過去最低です。このミスマッチには選挙方法のカラクリが働いているといいます。この大統領選、実は総得票はヒラリーの方が200万票も上回っていました。しかしながらアメリカ大統領選は選挙人制度があり総得票数は選挙結果と無関係です。州ごとに票を集計し、ほとんどの州が1票でも多く得票した候補がその州の選挙人をすべて獲得する「勝者総取り」方式なのです。カリフォルニアやニューヨークなど都心部ヒラリーが勝ったわけですが、中央部などはトランプが圧倒的で結果的に五大湖周辺の地域を制したことがトランプの圧勝つながったと言われています。

 

話が大きく逸れましたが、この選挙制度”グラミーの受賞結果と民意の間にズレがある構造”に少し似ているのかもしれないなと思ったわけです。カントリーミュージックが根強い人気を持つアメリカ中央部がトランプを支持し、そんな音楽ファンに支えられながら世に出たテイラーが大統領選で特定の候補者の支持表明を避けていたことにも色々な事情が垣間見える気がしてなりません。先ほどから肌感覚の話になってしまい申し訳ないですが、もしNARASの会員のほとんどがカリフォルニアやニューヨークで生活しているのであれば受賞結果も変わっていた気がしてならないのです。大統領選と同様に地理的な温度差をもグラミーは包括していると考えれば、傾向に基づく受賞結果も不思議でないように思えます。

 

今後のグラミー

 いろいろ書きましたが、昨年はケンドリックが逃して物議を醸した上で今年ビヨンセが獲れなかったことでグラミーの強い意思表明のようなものを感じました。「周りがどう騒ごうがグラミーは変わんねえぞ!」みたいな。宇野維正氏がぷらすと内で「グラミーは批評でも売り上げでもなくて権威なんだ」というようなことを仰っていましたが、まさにその通りだと思います。しかしながらその権威が2年続けてケチのつく結果を出してしまったことで今後その存在価値が問われることは避けられません。権威は信奉されてこそのものです。黒人アーティストをはじめとしてボイコットやノミネート提出回避が増えていけば音楽賞そのものが無価値になります。残念ではありますが今後そうなっていく可能性は十分にあると思います。MTVのVMAやAMAなど他にも音楽賞はありますがいうまでもなく現状のグラミーほどの権威はないだけに、今後アメリカの”音楽賞シーン”が大きく変化していくことが予想される中でどういった変遷を辿るのか見逃せません。グラミーに関して、その受賞結果と同様に授賞式内でのライブパフォーマンスは重要なことだと思いますが、個々のライブパフォーマンスの持った意味や解説については筆者ではキャパオーバーなので良質な文章が現れるのを待ちたいと思います。最後に今回のグラミーの可哀想な人を可哀想だったポイントとともに紹介して終わりにします。

 

  • アデル(栄えある主要部門三冠に関わらず素直に喜べない)
  • ビヨンセ(最高な作品最高なパフォーマンスをもってしても受賞できず)
  • リアーナ(期待させておいて何も起きず酒飲むとこだけ撮られる)
  • チャンス・ザ・ラッパー(白人に懐柔された印象を持たれる可能性)
  • ケイティ・ペリー(メッセージ性の強いライブパフォーマンスもどっちらけ)
  • ジェイ・Z(ビヨンセの受賞を見越して制作していた楽曲のちょいスベり感)
  • ジェイムズ・ヘットフィールド(マイクはいらず)

 

まあチャンス・ザ・ラッパーに関して、プロップを下げるんじゃないかという不安は杞憂だと思います。ツアーチケットの売れ行きも爆発的のようですし、何より本人の今後の楽曲制作でそんな不安吹き飛ばしてくれるようなものを見せつけてくれると信じています。

 

 

 

本文作成中に聴いた一枚↓

 

Her Too - EP / SiR (RnB)

 

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Her Too - EP

Her Too - EP

  • SiR
  • R&B/ソウル
  • ¥1050

 歌に制作にと多彩な才能を持つSiRの新しいEP。それもそのはず調べるとSiRは音楽一家に生まれ育ったサラブレット。本作も精錬された上質なプロダクションに病みつきになるようなキャッチーさも兼ね備えた良盤。にしてもシカゴやサウスサイドが中心と言えるシーンにあって、現代の西海岸を象徴するTDEは次々に有望な才能を確実に捕まえているなあ。ウェッサイボーイアマッ!ウェッサイボーーイ♪

大麻に関する議論のレベルが低すぎる。

前提。

こういったエントリを更新する上で、前もってしっかり自分の立場をはっきりさせておいた方が読者の方も読みやすいと思うので最初に筆者の立場を明確にします。

 

大麻合法化(解禁)は条件付きで賛成。かといって、日本で合法化するのは当分難しいと思う。」

 

筆者の考えは↑の通りです。

条件付きというのは”販売する場所や年齢規制など周辺の法整備も十分なされるのであれば”ということです。端的に言えば酒と一緒です。現行法では、どこでも酒を売っていいわけではないし、誰でも酒が売り買いできる訳ではない、まして酒を飲んで車を運転するなど言語道断です。大麻もそのように扱えば、合法化してもいいと思っています。

 

そしてアメリカの嗜好用大麻解禁が住民投票で実現した州のように税金をどっさりかけて、大麻の税収を教育や福祉に使うことはとてもいいことだと思います。

 

そもそもなぜ大麻に関してブログを書こうかと思ったのかといえば、高樹沙耶が逮捕されてからワイドショーなどでも大麻の是非を問う議論があったり、スカパーの人気番組"Bazooka"でも大麻の是非を問う特集があったりと色々な場での議論を目にしましたがどれもとても残念な内容だったためです。

 

議論が残念なワケ。

 大麻に関する一連の議論がしっくりこない要因の一つは、論点がはっきりしていないことだと思います。日本で大麻の話をするとき、普通の人は覚せい剤などのハードドラッグと大麻を並列に考えているなど、大麻に対する認識そのものが大きく誤っていることがあるため一から説明が必要になります。よって、最終的に"大麻解禁の是非"を問うところに行き着くまでに様々な論点を経なければなりません。これを始めから"大麻解禁の是非"を議論の主題と設定している為、論点がズレにズレて何の話をしているのか分からなくなってしまっている印象です。Bazookaも最初こそしっかり説明していましたが番組MC陣が質問を好き勝手にぶつけ出してから何の話をしているのか分からなくなってきました。

 

もう一つの大きな要因は大麻合法化・擁護派に論客がいない為だと考えています。今現在法律で禁止されているものを法改正して解禁しようとすることはたとえ大麻でなくてもとても難しいことだと思います。すでにある利益・利権を守ろうとする反対派は必死に反論するでしょうし頭の切れる人も多いでしょう。それを変えようとするのだから、しっかりした準備と頭が切れて雄弁でなおかつ品行方正である論客は必須です。

それなのに大麻合法化・擁護派の実情はどうでしょう。いかにもいかがわしい方達ばかりがメディアに出てきていますし、まともな活動家に見える方だった高樹沙耶は捕まるし最悪です。例えば、橋下徹池上彰クラスに影響力を持つ存在が本気で動けば少しはまともな議論になるのでしょうがそういった人材もいません。当然のことですが、大麻を真剣に解禁させようと思うのであれば、絶対に大麻で捕まってはいけません。「あなたのせいであなたの望む大麻合法化がグッと遠のきましたよ」と言ってやりたいです。

 大麻は体に良いのか悪いのか。

 街頭インタビューなどで大麻についてのイメージを調査しているところを見ていると「体に悪い麻薬」「一度やると戻ってこれなくなる」なんて意見がザクザク出てきます。これに対して、一概に「大麻は体に良いよ!食欲も出るし鎮痛作用もあるし!」なんて反論するとたちまち嘘臭くなります。筆者は医師でもなんでもないので、大麻の医学的効用に関してはっきりとしたことは言えませんが、自分なりに調べた結果トータルして”日本にもある嗜好品と同等レベルのもの”と結論付けています。

 

いやそれはないだろと思う方はご自身で調べてみてください。世界中には大麻に関する様々な論文や医療研究チームの発表があります。「大麻はやっぱり体に悪い」という主張のものもあれば「体に悪くないし寧ろ医学的効用がある」という主張のものも簡単にヒットすると思います。論文の信ぴょう性についてのリテラシーはありませんが、その中でもWHOが大麻を一概に悪とする見解を訂正したことは信用できると思います。

 

筆者の主張としては、「現行法で禁止されている以上手放しで体にいいわけないだろ。」とは思っていますが悪影響も嗜好品程度のもの確信しています。中毒性はニコチン以下でコーヒー程度とのことですし、脳に影響があるのは酒も一緒。暴力的になる場合があるといいますが、お酒を飲んで暴力的になる人物も山ほどいます。過剰摂取で鬱になる場合があるって、タバコは肺がんのリスクがあるし酒もアル中になれば大変です。脳に影響があるというところを、”溶ける・萎縮する”なんてイメージしているの方は大きな間違いで酒と同じ酩酊状態の一種になるということです。(もちろん効果が違うので大麻を好む人がいるのでしょうが。)そもそもそんな影響があるのであればいくらアメリカといえど解禁されないでしょう。

 

以上のことから、タバコにはリラックス効果があるという主張があったり、酒も百薬の長と言われているのと大麻も同じだと考えています。”体にいいかもしれない可能性を持つ嗜好品”で漢方のような側面もあるよ、と言ったような。

 

嗜好品をわざわざ解禁する必要があるか。

 Bazooka番組内で小藪氏が「現状で何も困っていないのに解禁する必要ないじゃないか。」というような趣旨の意見がありました、D.O氏が痛みで困っている病人の存在から必要性を説いていましたが小藪氏が心から納得していたかはわかりません。実はここが筆者が最も反論したいところです。

 

筆者の主張はD.O氏の意見と全く違います。そもそも筆者の知識量では鎮痛作用など、医療の現場で使用される大麻の効能に本当に代替物となる薬などが現在ないのかが分からない為です。それでも筆者は声を大にしてこう小藪氏に反論したいです。

 

「あなた嗜好品の存在価値わかってます?」

 

はっきり言ってこの世に存在する嗜好品に分類されるもの(酒・タバコ・コーヒー紅茶などお茶の類)はこの世の中になくてはならないものではありません。必需品に対してぜいたく品とも呼ばれる通りです。それでも生活をより豊かにするためにあってもいいものと存在価値を認められています。小藪氏も昔は愛煙家で今もタバコに対して嫌悪感はお持ちでないようでしたし、成人の国民でいかなる嗜好品も消費しない人の方が少ないでしょう。さらに、好きなワインを飲む、葉巻をくゆらす、コーヒーで一服するひと時を自身の人生において重要な瞬間と位置付けている方も多いのではないでしょうか。大麻がそんな嗜好品の一つとして持つ価値や魅力を知りもしないうちに否定することは、人が人生の中で享受できるはずの豊かさを失っている可能性があると言えると思います。

 

小藪氏は番組内でGHQ統制下の日本において大麻が規制対象となった理由やアメリカも規制されている事実を受けて「歴史的になんで色々なところで禁止になっているんですか?よくないものだからじゃないんですか?」のような趣旨の発言もしていました。これは他の嗜好品にも言えることです。アメリカでは禁酒法が敷かれ黒社会の資金源になった歴史がありますし、奢侈禁止令などで調べれば歴史的に世界中でタバコや酒が禁止になった事実がすぐにわかります。(江戸ではキセルの鋳造という間接的理由に止まりますが)

 

全ての日本である種の嗜好品を消費する方々は、なぜその初めのコーヒーやお酒の一杯、もしくはタバコの一本に手を出したのでしょうか。それは好奇心からでしょう。もちろん現行法で認められているものだからに違いありませんが、このような好奇心は否定されるべきではありません。よって世界的情勢や、映画や音楽などの影響で大麻に対して好奇心を持って法改正を望む人がいることは自然なことなのです。お酒が好きな人はお酒が禁止されている世界に住む人の存在を知ったらかわいそうと思うはずですよね。(馬鹿と思われたくはないので繰り返しますが、どんなに好奇心が強くても今日本で大麻を消費しようと思うことは愚かとしか言えません。)

 

なので筆者の主張は「嗜好品として大麻の価値を認め解禁し、その代わり政府もしくは自治体が莫大な税収を得て絶対に必要な行政分野に使うことは良いことである。」ということになります。他にも、暴力団など非社会的団体の資金源を絶ったり、大麻所持で捕まる者の司法手続きや刑務所でかかるコストを節約できるなどのメリットもありますしね。

 

最後に。

  いろいろなことを書きましたが日本での大麻合法化・解禁はたとえ医療用に絞ったとしても難しいと思います。影響力のある品行方正な論客の不在もそうですが、厚生労働省の壁が大きすぎます。ワイドショーなどにゲスト解説で登場する麻薬取締官大麻のことを徹底的に悪としますし、義務教育の保健教育の中でも大麻は手を出したら戻れなくなる麻薬だ。「ダメ絶対!」と刷り込まれます。麻薬取締官は法律で禁止されているものを悪とすることが仕事なのでこれは当然のことです。むしろ少しでも大麻の価値を認めてしまうようなことを厚生省管轄の麻取がしてしまうと国の一機関が国に刃向かうことになり矛盾してしまいますので有りえません、ゲーム理論です。一見厚生省の主張がアメリカの実情とあまりにかけ離れているために視聴者は違和感を持っても良さそうなものですが、それでもテレビに映る厚生労働省麻薬取締官という肩書きのテロップは、大麻合法化・擁護派のわけのわからない人物の意見よりよっぽど説得力があるようです。

 

まあ筆者自身は今すぐ大麻を吸いたいなんて思っていないので、自分が死ぬまでに世界的に解禁が進んで日本が大麻禁止のラストマンスタンディングとなり、解禁が実現したら嗜んでみたいなと思う程度です。

 

それでも好奇心が抑えられず大麻を消費したい、もしくは一度消費してから自分の主張を決めたいという方は旅先で大麻が解禁している地域で消費してみればいいとオススメしたいところではありますが、刑法2条関連の保護主義によって国外であっても大麻の所持は犯罪ですので胸を張って「大麻吸ってきた」なんていうのも愚かでしかないことは気に留めておいてください。

 

(医学・生理学的なことはわかりませんが、質問意見等ある方は気軽にコメントください。)

 

 

 

本文作成中に聴いた一枚

Creepy Nuts / 助演男優賞 (J-HIP-HOP)

 

【Amazon.co.jp限定】助演男優賞(オリジナルステッカー付)

【Amazon.co.jp限定】助演男優賞(オリジナルステッカー付)

 

 フリースタイルダンジョンで一躍有名になり、テレビやラジオ出演も目立つR-指定とDJ松永からなるユニットのEP。言われそうな批判は全て先に曲で言おう、今後の見通しの可能性を示そうという、不満や陰口などの鬱屈したモヤモヤをこれでもかと毒づいてスピットする表現やメタ的な考え方こそR-指定の本領なのだろう。ラップスキルはバトルで証明済みの通りストーリテラーとしての表現も抜群。いわゆるいなたさや渋さはないし、決してキャッチーな内容ではないので好き嫌いは分かれるだろうが彼らなりのリアルなヒップホップへの強い意志を感じる。ちなみに彼らは大麻と無縁の品行方正な存在である。

2017年1月よく聴いた音楽

前提。

 筆者が一年を振り返る際の備忘録として、できる限り月に一回その月に聴いた音楽の中で印象的だったものを一口メモ程度の説明と共に残そうと思う。

 

読者の方へ。 

基本的には洋邦ジャンルを問わずにチェックしていますが、B-boyの端くれなのでどうしてもHIP-HOPやR&Bが多くなります。J-popは好きなものだけ、他にはReggaeをよく聴きます。RockやJAZZも聴きますが、なかなか追いつきません。HIP-HOPでもTRAPには疎いですし、クラブミュージックでもEDMはほとんど聴かないなど守備範囲には偏りがありますので、それら考慮していだだいた上で読者のプレイリストの参考になったりすれば嬉しい限りです。

 

 

※以下表記は全て (アーティスト名 / 作品タイトル(ジャンル))で記載

邦楽(全4作品)

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G.RINA リヴアンドラーン

G.RINA リヴアンドラーン

 

 

前作Lotta Loveも相当聴いたが、今回も盤を通してシックなディスコポップに仕上がっていて中毒性十分。歌にラップに精力的に取り組んでいることも素晴らしいがこのクオリティで、楽曲制作を全て自分自身で行っているのだから感心するほかない。J-popを”アーティストレベル”で引っ張っている数少ない才能の一人。夜の街に繰り出す際に聴きたい。客演と相性も最高。

 

 

 

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PINK(DVD付)

PINK(DVD付)

 

 メーカーの説明によるとクイーン・オブ・シティポップらしい土岐麻子。Jazzボーカルや普段着のポップスのイメージが強いので、その説明は同意しかねるが今作は間違いなくシティポップと言える内容。(ちなみに個人的クイーン・オブ・シティポップは一十三十一)サウンドプロダクションが面白く、先ほど紹介したG.RINAの作品に客演として参加している土岐麻子の今作は2曲G.RINAが制作しているということで、レーベル/メーカーの枠を超えた関係が素晴らしい。とはいえAVEXから移籍しないかな。

 

 

 

  • Suchmos / THE KIDS (POP)

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THE KIDS(通常盤)

THE KIDS(通常盤)

 

 今月最大のボムであり、今年の年間最大話題作候補と言えるSuchmosの2nd。1stの"THE BAY"が音楽ファンの心をがっちり掴み、以後の精力的なEP/シングル制作や意欲的なライブへの取り組みといった本人たちの努力と、ベンダーのプロモーション(街中のゲリラライブやCMソング起用)が合わさって一般人の耳に届いた。内容もとにかくスタイリッシュでバランスがいい。シーンを引っ張っていく存在になったことは間違いない。

 

 

 

  • KID FRESINO / Slave (HIP-HOP)

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Salve

Salve

 

 

ヘッズを唸らす作曲能力を持つJJJと類い稀なるヒップホップセンスを持つfebbに挟まれてFla$hBackSでは3rd manの印象が強かったKID FRESINOの4曲入り音源。今回のバンド編成による制作がとにかく本人のフローと相性が良く才能が輝いている。シティ感の強く軽やかながらヒップホップであり続けている今作は今回だけの取り組みであれば勿体無く感じるほどの出来だ。シティポップという言葉があるなら、シティヒップホップと言える。バンドというと韻シストが目指している方向に近い気もするが、こういうサウンドとフローの組み合わせはフレッシュだ。ちなみに筆者昨年の国産ヒップホップベストはC.O.S.A.との共作Somewhereなのでそちらも是非チェックを。

 

 

 

 

洋楽(全7作品)

  • Matt Martians / The Drum Chord Theory (R&B)

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The Drum Chord Theory

The Drum Chord Theory

  • Matt Martians
  • R&B/ソウル
  • ¥1500

 

OFWGKTAのオリジナルメンバーでありプロデューサーとして名を売ったMatt Martiansのデビュー作。The InternetのパートナーSydの今月リリース作に先だっての発表となった今作はOdd Futureでの歪なプロダクションとThe Internetでのシックでクールなプロダクション両方の特徴を持っていて面白い。制作もベットルームで行ったと本人が言うようにチルな仕上がりで、休日昼下がりなどにもってこい。Sydのデビュー作も楽しみで仕方がない。

 

 

  • Gabriel Garzón-Montano / Jardín (R&B)

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Jardín

Jardín

  • Gabriel Garzón-Montano
  • R&B/ソウル
  • ¥1500

 前作のEPが好き者の耳に届きシーンで話題になったGabriel Garzón-Montanoがいつの間にかStones Throwと契約してリリースしたデビュー作。(メイヤー・ホーソンの仲介?)浮遊感あるプロダクションとセルフコーラスなどは健在で、マクスウェルや晩年のプリンスを彷彿させる印象は本人も憧れている存在ということなので間違いではないだろう。聴いていると微熱が出ているような感覚に陥る不思議な一枚だ。

 

 

 

  • Kehlani / Sweet Sexy Savage (R&B)

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Sweetsexysavage

Sweetsexysavage

 

 

説明は前回のエントリの最後に書いているので割愛。それにしても21歳でこの完成度とは恐ろしい。

 

 

 

  • Kodie Shane / Big Trouble Little Jupiter (HIP-HOP)

www.youtube.com

www.hotnewhiphop.com

昨年末にリリースした"Zero Gravity EP"が素晴らしい出来だったアトランタ生れシカゴ育ちのフィメールMC Kodie Shaneのフリーミクステ。まだ十代という恐ろしい若さで昨年ブレイクしたLil Yachyの"Summer Song 2"収録曲でありポッセカットの"All In"にも参加している。前作ほどの出来ではないが、適度にレイドバックで歌心もある彼女のフローを堪能するには十分なクオリティ。今後の動向が気になる才能である。無料なのでチェックしない手はない。貼ってあるMVは"Zero Gravity EP"収録曲のものなのでご注意を。

 

 

 

www.youtube.com

 

I See You(輸入盤CD)

I See You(輸入盤CD)

 

 

UKの人気オルタナバンド5年ぶり3作目のスタジオアルバムは、ぶれることなく自身の目指す方向性を突き詰めてネクストレベルへと進化させた快作と言える。そもそもDJ/プロデュース部門を担当するメンバーのJamie xxが個人のキャリアで2015年のどの雑誌の年間ベストにも食い込んでくるほどの良作"In Colour" をリリースしており、そのキャリアにおいてR&Bやハウスミュージックその他様々な音楽の影響を受けた豊かなサウンドプロダクションを確立させた。本作でも音に含蓄がありジャンルレスな世界観は見事。特に女性ボーカルRomy Madley Croftとの相性は抜群で、作品にさらなる深みを持たせている。

 

 

 

  • Jansport J / p h a r a o h (HIP-HOP)

www.youtube.com

p h a r a o h

p h a r a o h

  • Jansport J
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1500

インストゥルメンタル作品からも一つ。数年前アメリカ西海岸を中心に一気に世界的盛り上がりをみせたビートシーン、恥ずかしながら筆者は最近はなかなかチェック出来ていないが、久々にグッとくるものに出会った。本場カリフォルニアで活動するプロデューサーJansports Jの本作はHIP-HOPの醍醐味と言えるミニマルなループの中毒性が存分に味わえる内容だ。ネタ使い、ドラムブレークの質感、グルーブ感などいろいろな角度から美学を感じる本作だが、国内のフィジカルリリースはカセットだけのようで残念だ。

 

 

 

  • Migos / Culture (HIP-HOP)

www.youtube.com

Culture

Culture

  • ミーゴズ
  • ヒップホップ
  • ¥1600

 USヒップホップシーン1月最大の話題作といえば本作になるだろう。楽曲がSNSでバズるなどいかにも現行シーンならではの話題を提供してくれるMigos。三人のキャラクターもさることながら、繰り返す印象的で中毒性があるが簡単なフレーズがトレードマークで、今作もそんな持ち味はキレキレでキャッチーさもあるので意外とHIP-HOP門外漢の方でも親しみやすい内容と言えるのではないか。2017年のHIP-HOPシーンのど真ん中を知りたいのであれば見逃せない作品だ。ビッゴンビー!!

 

 

 

 

以上全11作品。邦楽はとにかくアーバンな内容な作品に良作が多かった印象だ。

2017 グラミー賞に思う。(受賞者予想含む)

もうすぐグラミー賞

 今年もグラミー賞が迫ってきた。2月12日に授賞式があり、それぞれの部門のノミネートはすでに発表されている。このノミネートの対象期間は、授賞式の2年前の10月から1年前の9月までの一年間で、今年で言えば2015年10月〜2016年9月までが対象期間となる。えらく奇妙な期間設定だなと思われるかもしれないが、これはノミネートの選考期間を考慮して設定されたものらしい。主要4部門と言われる賞のノミネートは次の通り。

 

Album of the Year(最優秀アルバム賞)←アルバム演奏者および製作チームに授与。

 

Adele – 25
Beyonce – Lemonade
Justin Bieber – Purpose
Drake – Views
Sturgill Simpson – A Sailor’s Guide To Earth

 

Record of the Year(最優秀レコード賞)←シングル曲演奏者および製作チームに授与。

 

Adele – Hello
Beyonce – Formation
Lukas Graham – 7 Years
Rihanna ft Drake – Work
Twenty One Pilots – Stressed Out

 

Song of the Year(最優秀楽曲賞)←シングル曲の作詞者、作曲者に授与。

 

Adele – Hello
Beyonce – Formation
Justin Bieber – Love Yourself
Lukas Graham – 7 Years
Mike Posner – I Took A Pill In Ibiza

 

Best New Artist(最優秀新人賞)←この1年で著しい活躍をみせた新人に授与。

 

Kelsea Ballerini
The Chainsmokers
Chance The Rapper
Maren Morris
Anderson .Paak

 

皆さんはノミネートされたアーティスト/楽曲をどれくらいチェックできているだろうか。個人的にはAdeleやTwenty One Pilotsなどは「今年のノミネートなの?去年じゃなかったっけ?」と思うくらい前に聴いた印象であるが、それもそのはずリリースがどちらも2015年10月と前述の対象期間ギリギリなのだ。最優秀新人賞に関してB-boyであれば、昨年フレッシュマンとして話題をかっさらったのはぶっちぎりでAnderson .Paakだと感じるだろうが、Chance The RapperがノミネートされているとなればChanceに取らせてあげたい気持ちも強く悩ましい。しかしながら実際は杞憂に過ぎず、案外Kelsea BalleriniかMaren Morrisあたりのカントリーポップスの新星があっさりとっていくのがグラミーだったりする。

Chance The Rapperに関しては2016年のベストを書いたエントリでも触れているので是非チェックを↓↓

 

nino-brown.hatenablog.com

昨年ぶっちぎりのAnderson .Paak↓

MALIBU [国内仕様盤 / 帯・解説付き](ERECDJ218)

MALIBU [国内仕様盤 / 帯・解説付き](ERECDJ218)

 

 

最注目はやはりAdele。

 ここからは筆者の独断と偏見に基づく予想になるのだが、今回のグラミーの最注目候補はAdeleということになるだろう。最優秀アルバム賞では本命と言えるし、主要4部門中3部門で受賞する可能性も十分にある。ここで、先ほどのノミネートリストを筆者の予想を加えたものを再び載せたい。

 

(◎:本命、◯:対抗、▲:大穴とする。)

 

Album of the Year(最優秀アルバム賞)←アルバム演奏者および製作チームに授与。

 

◎Adele – 25
Beyonce – Lemonade
Justin Bieber – Purpose
Drake – Views
◯Sturgill Simpson – A Sailor’s Guide To Earth

 

Record of the Year(最優秀レコード賞)←シングル曲演奏者および製作チームに授与。

 

◎Adele – Hello
Beyonce – Formation
◯Lukas Graham – 7 Years
Rihanna ft Drake – Work
Twenty One Pilots – Stressed Out

 

Song of the Year(最優秀楽曲賞)←シングル曲の作詞者、作曲者に授与。

 

◯Adele – Hello
Beyonce – Formation
Justin Bieber – Love Yourself
◎Lukas Graham – 7 Years
Mike Posner – I Took A Pill In Ibiza

 

Best New Artist(最優秀新人賞)←この1年で著しい活躍をみせた新人に授与。

 

◯Kelsea Ballerini
◎The Chainsmokers
▲Chance The Rapper
◯Maren Morris
Anderson .Paak

 

このようになる。お気付きの方もいるかもしれないが、筆者の予想では本命、対抗としてあげているのは全て白人アーティストである。これはグラミーが白人を優遇しているという判断からではないが、グラミーを獲る”傾向と対策”を考えるとどうしたって白人アーティストの方が可能性が高いように思えるのだ。

 

グラミー獲得の”傾向と対策”

 筆者もB-boyとして、HIPHOPアーティストがグラミーを獲得してほしいと願っているが過去の受賞者を考えるとかなりハードルは高い。振り返ると、99年にはLauryn Hillの"The Miseducation of Lauryn Hill"が04年にはOutKastの"Speakerboxxx/The Love Below"がそれぞれ最優秀アルバム賞を受賞しているが、前者はR&BやSoulの趣きが強くピュアヒップホップの作品ではないし、後者は奇跡に近い受賞だがOutKastがそれまでキャリアを経てHIPHOPアルバムをPOPに昇華させた内容とも言える。近年では、14年のMacklemore & Ryan Lewisの新人賞獲得が記憶に新しいが、この年はKendrick Lamarをおさえての受賞だったのでなんとも複雑だ。むしろこの年の新人賞と去年傑作"To Pimp a Butterfly"で最優秀アルバム賞をKendrickが逃したことが筆者にとってグラミーを遠いものに感じる最大の要因かもしれない。

 

ここで筆者の考えるグラミー獲得に有利な要素について言及したい。

  1. カントリーやフォークなど伝統のある音楽ジャンルであること
  2. 万人に響くポジティブなメッセージがあること

1に関して、NARASの会員投票によって選考されるグラミー賞において、会員の平均年齢が高いことから当然予想される結果ではある。つまり極端に言えば年配の会員(当然黒人は少ないだろう)にとって馴染みのある音楽ジャンルが有利といえる。ヒットチャートがブラックミュージックによって席巻されていても関係ないのだ。

2に関して、これは完全に私見であるが、例えば「同性愛もいいよね」「差別に負けないぞ」「自分らしく自由に生きたい」など万人それぞれが共有できる普遍のメッセージというか、誤解を恐れず言えば「当たり障りのないメッセージ」が非常に好まれる印象がある。”ポリティカリーコレクト”を重要視するアメリカではこう言ったメッセージは手放しで評価できるためウケがいいのかもしれない。本年ノミネートのBeyoncé"Formation"やKendrick Lamarの一連の作品群のように素晴らしい詩的表現で強いメッセージ性があっても、物議を醸すような強烈な表現のある作品は敬遠されるのだろう。

以上の二つの要素を踏まえると、いよいよブラックミュージックのグラミー受賞は難しい気がしてくる。

 

(※追記 作品の素晴らしさから今回受賞すべきとの声が多いBeyoncéの"Formation"についての解説は渡辺志帆氏のブログエントリがとてもわかりやすいので是非チェックを↓)

 

shihowatanabe.hateblo.jp

 

 

受賞した二枚↓↓

The Miseducation of Lauryn Hill

The Miseducation of Lauryn Hill

 

 

Speakerboxxx: Love Below

Speakerboxxx: Love Below

 

 

 受賞を逃したKendrick↓

To Pimp a Butterfly

To Pimp a Butterfly

 

 

最後に。(それでも希望的観測を)

 いよいよグラミーはB-boyと縁がないもののように思えてきたところで、希望的な観測も示したい。的確な表現かわからないがグラミーの”バランス力”に期待すると、本年のノミネートからブラックミュージックアーティストが選ばれる可能性はあるのだ。

先ごろ、アメリカ大統領に就任したトランプ氏の宣う”アメリカ・ファースト”の実情に漂うアメリカ白人至上主義のようなニュアンスを感じている人は少なくない。政治的にそのように排外主義のような雰囲気が高まっている中で、文化面でも近々授賞式のあるアメリカ映画賞の権威アカデミー賞と世界一有名な現代音楽の権威グラミー賞の受賞者が全て白人であればいよいよ世界の終末のような印象を受けるだろう。だからと言って「黒人を受賞させるべき」というのではなく「黒人アーティストの持つ音楽性の高さを素直に評価しやすいタイミング」と言えるのではないのか。アカデミーも今年の演技部門の黒人候補者は過去最多の6名ということなのでそう言った”バランス力”が働いているのかもしれない。そう考えると、今年のグラミーも大穴としてBeyonceやChance The Rapperが受賞する可能性もあるような気がしてこないものだろうか。いずれにせよA◯EXとかいう特定ベンダーに飼い慣らされているような日本の賞と違って、グラミーは式の中でいろいろなアーティストのレベルの高いパフォーマンスを堪能できるので要チェックである。

 

(保険※ブラックミュージック自体は当然レベルミュージックとして高いポテンシャルを持っていて、グラミーを獲れる獲れないでどうにかなるものではないし、むしろ逆境に良作を生みやすジャンルだと思うので今後も良作が生まれること請け合いである。)

 

 

↓本文作成中に聴いた一枚

 

Kehlani / Sweetsexysavage (RnB/Soul)

 

www.youtube.com

 

数年前フリーミクステ"Cloud19"でぶっ飛ばされたKehlaniだが、当時の衝撃的魅力そのままに既にアーティストとして円熟をむかえているのでないかと思える内容だ。とにかくフックの中毒性の強烈さは健在で前回は"As I am"を死ぬほど聴いたが、今回も長いこと楽しめそうな一枚である。

Sweetsexysavage

Sweetsexysavage

 

 

 

著作権とか二次的著作物とか難しすぎる。

はじめに。

 

 昨年末にかけて、ネット上では”キュレーションメディアと著作権”に関するブログエントリを多く見かけた。DeNAの件はさておき、軒並みどの文章も「キュレーションメディアの実態は著作物のパクリの温床だ」という指摘がされていた。更に専門家なのか事情通なのか良く分からない方々がそれなりに解りやすく著作権についての解説をしている。

 

しかしながら、どのエントリを読んでも筆者の理解が深まることはない。一言一句の理解を問われる法文でさえ通じていない者にとって、著作権というのはかなりハードルが高い。わかった気になることが一番危険であるかもしれないという恐れも含め、今現在も全く著作権について知った気がしてしない。

 

よって今回は、一連の著作権に関する騒動を観察した感想を阿呆らしくも無学の筆者なりに書こうと思う。通りすがりの事情通の方や、意見をお持ちの方がいればコメントいただければ嬉しい限りである。

 

引用以前の問題。

 

 著作権の話といっても、年末の話題や当ブログにも関係する範囲に限定すると”著作物の引用”の話、ということになる。それも主にネット上に溢れる画像を引用するケースである。「著作物 引用 定義」などと検索すればいくらでも解説がヒットするが、ケーススタディというか具体例がないのでイメージができない。引用元を明記すればいいわけではない、なんて文章を読んでも「ふむふむなるほど」とはならないのだ。一体なぜこうも理解が進まないのか。それは、そもそも”引用”の前に”著作物”が何かが分からないからだ。

 

思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの (法文まま)

 

著作物の定義は上記法文の通り。全くもって分からない。知りたいのは筆者がブログエントリを書く際画像をどこかから持ってくるときその画像が”著作物”に当たるかどうか、であるがこれではお手上げだ。具体例を一つ上げて疑問を鮮明にしたい。

 

例えば、福岡歴25年以上の筆者が「福岡市民が本当にお勧めできるラーメン10選」なんてタイトルのエントリを更新したいとする。(実際この手のエントリをあげようかと考えるほどキュレーションメディアやネットで検索上位にヒットするオススメは酷い)

当然読者の利用しやすさを考慮するとそれぞれのラーメンの写真があったほうが親切だ。しかし現在筆者の手元に一切ラーメンの写真データがないとする。仕方なく筆者はネットで検索してヒットした画像を転載するとしよう。このケースでも、筆者は著作権法違反をしたことになるのか、ということである。

 

つまりこのケースでの疑問は

  1. たかだかラーメン一杯を写した写真が著作物に当たるのか
  2. この文脈での転載が転載元アップローダーに被害を加えたことになるか

ということだ。

もしこのケースが著作権法違反に当たるとするならば、考えものである。今後ネット上で公にシェアするものは全て自分で撮ったものでなければならないのか。理解ある方からすれば「お前まだそんなこと言ってるのか」という感想かもしれないが、なんとも肩身の狭い思いである。

そもそも飲食店、とりわけラーメン屋で提供されたものに箸をつける前に写真を撮られるのは店主として気分の良くない方も多いだろう。それでも写真を撮る方はいるわけで、そう言った写真を"著作物"としてこのネット時代に無料でシェアすることを拒むのであればがめついと思うのだがどうだろうか。プロの写真家が自身の収入源とするため店主に許可を取り、最良の撮影条件のもと光量から何から計算し尽くされた一枚を撮るというのであれば、それは紛れもない”作品”であって筆者でも”著作物”として認識できるが多くはそうではない。

ひょっとすると、何気ない写真であってもしっかりとした”著作物”という認識を持つ方が当然であって「タダでシェアさせろなんてお前の方ががめつい」という意見の方が多いかもしれない。これだから著作権は難しい。

 

ここまででも、ただでさえ難しい著作権であるが、さらに複雑なのがある”著作物”をもとに作られる二次的な著作物があることだ。

 

二次的著作物との付き合い方。(引用後の問題)

 

 細かい定義や解釈について、筆者は門外漢であるから気になる方は調べて欲しい。ある著作物について、翻訳・編曲・変形・脚色・映画化など二次的創作によって作られるものを”二次的著作物”というらしい。説明を書いている自分でもまだ”二次的著作物”よく分からないが、ほとんどがサンプリングという手法を製作過程に含むヒップホップの楽曲も二次的著作物に当たるのだろう。よくアルバム製作のこぼれ話「クリアランスの関係で没になった」なんて話を耳にするが、これはアーティストが楽曲を作って売り出すまでに、レーベル・メーカー/ベンダー・プレスのいずれかの段階で著作権について問題ないかのチェックに引っかかったということだろう。大きなメーカー/ベンダーではそれなりにしっかりしたチェックに努めているのだろうが、それでも元ネタ楽曲制作者との訴訟問題は絶えない。

 

二次的創作によって作り出されるものといえば、日本では数年前からyoutubeニコニコ動画で「〇〇踊ってみた」「〇〇歌ってみた」なんてものがムーブメント化している。楽曲に対してオリジナルの振り付けを考えシェアし、人気が出ればネット上では一躍有名振り付けダンサーになれる時代だが、「〇〇踊ってみた」動画を投稿している方々が著作物使用料を楽曲制作者に支払っているとは考え難い。少し調べてみたが限りなくグレイである。

 

このようにヒップホップや「〇〇踊ってみた」のコンテンツからわかる通り、二次的創作によって生み出された文化やコンテンツは現在若者を中心に世界的に親しまれている。これらはオリジナルに対する敬意を欠いた偽物ではなく、敬意があるからこその二次的創作であり、言葉通りオマージュが形を変えてできた文化やコンテンツと言えるだろう。

 

筆者はキュレーションメディアの著作権の問題と、二次的創作物の著作権問題は決して無関係ではなくどちらも”敬意のある二次的創作”と”敬意なき引用・盗作”との間の世界の話で、つまり問題の要は引用する側にあるように思うが、実情はセクハラのように「被害感情」が生まれるかどうか、つまり引用される側にある気もする。こんなことを考えているといよいよ分からなくなってくる。やはり著作権についての認識は法文の解釈のように難しい。

 

 

最後に。

 

 筆者の支離滅裂とも言える本文を力づくで要約すると、「著作物がそもそも何かわからない上に、時代が二次的創作をある程度許容している気がしていていよいよ分からない。」ということである。いくつもあるハテナをひっくるめて”著作権問題”になるわけで、何一つ消化しきれていない筆者は”著作権問題”について何も主張することができないことが歯がゆい。専門家でない者は理解しえないように思えるグレイゾーンをどう認識すべきか、誰か知恵を貸していただけないものだろうか。

 

 

 

 

本文作成中に聴いた一枚

 

Rael / Coisas do Meu Imaginário (RAP)

 

www.youtube.com

 

 

 

Coisa Do Meu Imaginario

Coisa Do Meu Imaginario

 

 

LATINA誌を読んで遅れを取り戻すべく駆け足で2016年のブラジルシーンをチェックしているが、素晴らしく完成度の高い一枚である。流石Emicida主催レーベル所属。

福岡を博多と呼ぶな。

福岡は博多ではない

 

福岡市民として福岡に生まれ育ち25年以上福岡の街に生きる者として、一部の勘違いした市民や全国の方々にちょっとしたクレームをつけたい。

 

タイトル通り一言、

 

「福岡を博多と呼ぶな。」

 

ということである。別に怒るほどの問題ではないが、誤解している人が本当に多いことなのでハッキリと言いたい。

 

福岡は博多ではない。

 

まず最初に言っておきたいのは、福岡を博多と呼ぶことは北海道を札幌と呼んだり宮城を仙台と呼ぶこととは訳が違うということである。何せ札幌も仙台も県(道)庁所在地であるが、博多に関しては主に"福岡市博多区"を指す言葉でしかないのだ。こう説明すると、次に「でも福岡と言えば、一番栄えているのは博多でしょ」という次の誤解が生まれる。確かに博多エリアはオフィス街としては市内で最も機能していると言って過言ではないが、ショッピングや行政の中心は中央区天神エリアだ。例えば、パルコ、三越、大丸、岩田屋(地元の伊勢丹系列百貨店)など全て天神エリアにあるし市庁も中央郵便局も全て天神エリアにある。

 

博多エリアと天神エリアを比べてどちらが上だという気はさらさらないが、福岡市民の感覚では福岡市の中心は天神エリアということになる。 

 

そもそも博多エリアと天神エリアは"那珂川"という川を隔てて隣接しているわけだが、なぜ筆者がここまでこだわりたいのかと言うと、歴史的に見ても福岡と博多は違うどころか二つのエリアは因縁浅からぬ関係であるからだ。福岡市の広報課長のコラムにわかりやすい解説があるのでクリックして参照してもらいたい。要約すると、那珂川を起点に西側は天神エリアを中心とした城下町、東側は博多エリアを中心とした商人の町で、両エリアは"市の名称"を争った仲ということなのである。

 

 

次に、市民の行動範囲からも福岡と博多の違いについて言及したい。筆者は福岡エリアで生まれ育った福岡市民であるが、普段の生活で特別な用事がない限り博多エリアに行くことはない。逆がどうかは定かではないが、どちらのエリアも十分に街としての機能を持っているので生活がどちらか片方のエリアで完結するのだ。東京にお住いの方でも、行動範囲が基本的に新宿周辺エリアで完結する方と東京駅周辺エリアで完結する方がいるだろう、そのイメージが近いかもしれない。全く博多エリアに行かないというわけではないが博多エリアのことは良く分からず地元感を持てないのである。よく東京の友人が福岡に来訪する際に「博多駅周辺でオススメのご飯ある?」と尋ねられるが、福岡(天神)エリアを行動範囲とする筆者は博多エリアに関して観光客のリサーチ力に毛が生えたレベルの知識しか持たないのだ。

 

 

何故福岡は博多と呼ばれるか。

 

では何故全国的に福岡のことを博多と呼ぶようになったか、大きな原因の一つに上にリンクを貼ったコラムの説明にもある通り"交通の問題"があると考えらる。

 

天神エリアには西鉄福岡駅や地下鉄七隈線起点の天神南駅があり福岡市の交通の中心と言える。しかしながら一方の博多エリアにあるみなさんもご存知の博多駅は新幹線やJRの起点となっており福岡県の交通の中心、ひいては九州の交通の中心なのである。よって、当然福岡市民ではない福岡県民や福岡県外の方々にとっては博多エリアが福岡の中心のように思えるだろう。福岡は、交通の拠点が市と県で違い複雑なのである。

 

"交通の問題"の他に原因を考えると、やはりメディアの影響が大きいのか。全国5大都市という名目で、"東京・大阪・名古屋・札幌・博多"のように並べられては誤解も一向に解消されないままであるし、芸能人は歓楽街である中洲で遊ぶことが多いのだろう。中洲は博多エリアに含まれるため、芸能人が福岡の街を「博多」と誤解し発言することが多いのも問題だ。

 

 

あとがき。

最後に、誤解されないように改めて強調するが、本文は福岡の街全てを指して"博多"と呼称されるのに異を唱えるものであって、博多エリアが「博多」と呼ばれることに抵抗は当然全くない。博多エリア外のことも指しているのに「博多」と呼ばれることに抵抗があるのだ。

 

最後まで本文を読んでいただいた方は是非、福岡市民と会話する機会があればこの話をしていただきたい。きっと盛り上がるだろう。しかしながら全国の方々の誤解を甘受して、博多エリア外の生まれ育ちであるのに「出身?博多です」とか「博多の実家に帰省します」なんて適当なことを言う不届きな福岡市県民も多くいるので、そのときは問い詰めて説教してもらいたい。